9月に入り、昭和基地は「夏日課」となりました。「日課」とは観測隊の時間割のことを言い、夏日課では朝の始業が冬日課より1時間早い朝8時となります。この時期に夏日課に切り替わるのは、日が出ている明るい時間をより有効に使うためのもので、9月上旬の日の出は朝7時台となり、ぐんぐん日が長くなっていることを実感します。とはいえ、季節はまだまだ冬です。年間で最も気温が低い時期が続いていて9月5日には最低気温が-33.0℃となり、今年の気温の最低記録を更新しました。
また、数日おきにやってくるブリザード※1後の点検や対応にも苦労していて、9月1日には昭和基地の各所で観測や通信に欠かせないアンテナの修理に追われる様子が見られました。
HFレーダーは高さ15m~20m、幅は12mにもなる大型の短波レーダーで、基地主要部から東~南側に約1km離れた岩山に建っています。SuperDARN(スーパーダーン)という名の国際共同観測網プロジェクトの一端を担っており、主に電離圏※2(高度約100~500km)の風を観測しています。8月下旬に立て続けに昭和基地に襲来したブリザードの影響で、アンテナの振れを抑止するために設置している線が外れてしまい、今回アンテナを倒して振れ止め線を付け直す作業を行いました。
こちらは基地主要部から約200m北側、アンテナ島での補修作業の様子です。アンテナ島には隊員が昭和基地内外で通信を確保するための主要な設備として、短波送信機、短波用アンテナなどが設置されています。強風の影響で破断し、絡んでしまったアンテナ線を解く作業を行っていました。
電離層棟の屋上にはアマチュア無線用の八木アンテナを設置しています。昭和基地にある多種様々なアンテナのなかでも、こちらは趣味の分野。アマチュア無線係の隊員が休日や終業後に世界のアマチュア無線家と交信するために使用しているものです。強風の影響で破損してしまったアンテナが、建屋に当たって建屋を傷つける可能性があるため、急遽屋根から降ろす作業が行われました。
越冬隊の大切な任務のひとつとして、冬のあいだの基地設備の保守点検があります。今回はその実際の作業の現場をご紹介しました。南極の青空、ほんとうにキレイですよね。晴天が毎日続けばいいのですが、ブリザード接近前の養生と通過後の点検・除雪に追われる日々はまだまだ続きます。
(JARE64 白野亜実)
※1 ブリザード…降雪を伴う強風、猛吹雪。
※2 電離圏(電離層)…地球の大気の高度60km~1000kmほどにあり、大気が太陽の光を受けて電離し、電気を帯びた状態になっている領域のこと。
※3 ダイポールアンテナ…短波用の送受信アンテナ