ロンビックアンテナとは、ひし形に張った電線で構成されるアンテナです。昭和基地では、管理棟から北側に約200m離れた「アンテナ島」と呼ばれる島に、一辺の長さが120mの巨大なものを設置しています。竣工は1980年(第21次隊)で、40年以上にわたり活躍しています。
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手書きで青焼きの図面は趣があります
(竣工当時の1980年に作成された図面より)
このアンテナを使用した無線通信(短波)により、昭和基地から離れて例えば南極大陸上で野外観測を行う際に定時交信を行い、作業進捗や異常の有無を確認します。隊員が安全に観測を続けるうえで、なくてはならない設備です。
このアンテナを構成する電線の1箇所に、8月6日から7日にかけてのブリザード(強風を伴う降雪)後の点検で断線が発見されたため、天候が安定した8月10日に修理を実施しました。
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写真中央の電線が垂れ下がっている部分が断線箇所です
撮影:JARE64 中村映文(2023年8月10日)、以下同様
まず、高さ約5mの電柱に登り、断線箇所の電線を張り直しました。電柱上での細かい作業となりますので、経験豊富な電気担当の隊員が実施しました。経験豊富とはいえ、初めて目にするアンテナを修理するわけですので、金具のサイズが想定と違ったり、金具がうまく取り外せなかったり、苦戦している様子が見られました。
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次に、張り直した新しい電線と、断線していない区間の古い電線とを、接続金具でつなぎました。この作業は、手際よく作業が進み、ほんの数分で完了しました。
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続いて、碍子(がいし)と呼ばれる絶縁体を取り付けました。平行に張られた2本の電線どうしが接触しないようにするためのものです。これもブリザードで破損したため、新たに取り付けました。
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最後に、平行に張られた2本の電線の「長さ」と、「張り具合」が揃うよう、2人の隊員が電柱に登って調整しました。こうして、全ての作業を2時間ほどで終えました。
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この日は、氷点下8度、風速9m/sと比較的暖かく穏やかな日でしたが、作業現場の周囲には風をさえぎるものがなかったため、観測された数値よりも風を強く寒く感じました。そのような状況に配慮し、作業後に、アンテナ管理者の通信隊員から温かい紅茶が差し出され、体を温めたのち撤収しました。
おまけ
今回の修理では、電線を電柱に固定するための金具の交換も行いました。ブリザード時は、電線と金具が激しくこすれ合うため、数年で摩耗してしまいます。ブリザードの威力がおわかりいただけるのではないかと思います。
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輪の上部が摩耗しています
(JARE64 LAN・インテルサット担当 中村映文)