昭和基地の発電を守る

私たち越冬隊が通年で滞在するうえで、観測の継続と基地の生活には安定した電力の供給が欠かせません。今回は昭和基地の発電機を担当する設営部門の仕事を紹介したいと思います。

基地主要部の建屋のうち発電棟に常用ディーゼル発電機が2基設置してあり、常時1基が稼働し、各建物や設備に電力を供給しています。ディーゼルエンジンは大型船舶で使用されるような大きさで、排気量約27000cc、6気筒、最大出力300kVA(約240kW)、電圧400V、周波数50Hzの仕様となっていて、一般家庭約15軒分の電力をまかなうことができる能力があります。エンジンの排熱を利用する熱電併給型(コ・ジェネレーションシステム)となっていて、エンジンの冷却水から熱交換器を介して熱を取り出し、雪を融かして水を作り、生活用水や基地主要部の温水暖房に利用されています。

発電機は約500時間を目安に交互に運転を切り替え、休止中に定期整備を行うことで常に正常な状態に維持、管理されています。取材時は1号発電機が運転中で、2号発電機を担当隊員が整備、試運転しているところでした。

昭和基地の心臓部、常用ディーゼル発電機
撮影:JARE64 白野亜実(2023年5月15日)
2号発電機の整備を行う発電機エンジン担当の佐東隊員
撮影:JARE64 白野亜実(2023年5月15日)

発電機エンジン担当の佐東隊員に、日頃どのようなことに気を付けて整備しているか尋ねたところ、「万一発電機が止まり停電したら、電気だけでなく、暖房や造水などすべて止まってしまう恐れがある命に関わる仕事であり、これを念頭に日々丁寧に整備しています。」と話してくれました。

発電棟は基地主要部にあり、ここから昭和基地各所に電力を供給しています
撮影:JARE64 白野亜実(2023年5月11日)

昭和基地の発電機は、担当隊員たちの確かな技術力により設置から20年以上に渡って安定して稼働し、観測と隊員の生活を支えています。昭和基地で生活を始めたばかりのころは、24時間鳴り続ける発電機の運転音に正直驚きましたが、極寒の環境下で安定して電力が供給されることのありがたさを知った現在は、とても頼もしい音に聞こえます。

(JARE64 白野亜実)