暴風圏の航行

64次隊では、12月3日から7日にかけて通過した南緯40度から60度にかけての海域は、地球を周回する偏西風や海流(南極環流)の行く手をさえぎる陸地がないため、一年を通じてとても強い風や高い波が発生する暴風圏となっており、「吠える40度、狂う50度、絶叫する60度」とも呼ばれています。

3日の南緯40度の観測地点では、フリーマントル出港時に比べると波のうねりは大きくなりましたが、天気は良く海は吠えることもなく穏やかでした。しかし翌日4日の南緯45度になると白波が立ってきました。

3日の南緯40度の時点では穏やかな海でした
撮影:JARE64 山口真一(2022年12月3日)
4日の南緯45度になる頃には風と波が強くなってきました
撮影:JARE64 山口真一(2022年12月4日)

5日の南緯50度付近では最も海が荒れる予報でした。青空は出ているものの、波高は7mもあり予定していた海洋観測は中止となりました。船は時折大きな横揺れを起こし、船内ではまっすぐ歩くことが難しく、食事の際は積んであった食器がひっくり返るなど悲鳴が飛び交う状況でした。この日は現行「しらせ」史上最大の傾き30度を記録したとの事で、「狂う50度」は我々にとって絶叫する50度となりましたが、操舵室に上がって船首から波が飛び散る様子を楽しむ隊員も多く見受けられました。

5日の朝、南緯50度付近。大きな波しぶきを上げながら進む
撮影:JARE64 山口真一(2022年12月5日)

「しらせ」の傾斜計。30度は過去最大の傾きとの事
撮影:JARE64 栗田直幸(2022年12月5日)

6日になり南緯55度を過ぎると、低気圧のピークが過ぎ海は徐々に穏やかさを取り戻していきました。翌7日には南緯60度に達し、我々はついに南極海へ到達しました。今後は針路を西向きに進んでいきます。

7日の朝6時15分には氷山の初視認があり、南極海へ到達したことを実感します
撮影:JARE64 山口真一(2022年12月7日)

(JARE64 山口真一)