ドームふじチームはドームふじ地域へ向けて、南極の内陸を移動しています。11月23日には沿岸から250キロメートルの位置にあるみずほ基地に到着しました。標高は2000メートルを超え、みずほ基地到着の翌朝からは、気温マイナス30℃を下回る厳しい寒さが続いています。
現在はみずほ基地とドームふじ基地の中間点にある、中継拠点(MD364)に向かっています。みずほ基地から中継拠点に至る区間は南極氷床の中腹部にあたり、カタバ風と呼ばれる斜面下降風が常に吹いています。この風によって、氷床表面に積もった雪は吹き飛ばされたり、吹き溜まったりして、サスツルギと呼ばれる独特の風成形状を生じます。サスツルギの表面はとても硬く、人間が乗っても崩れません。雪上車も、このサスツルギを乗り越えて進んでいきます。近年は圧雪車の導入により、サスツルギをならして比較的平坦な道を作ることが可能になったため、以前よりも高速での移動が可能になりました。それでも凹凸を乗り越えて進むため、車輌や橇を壊さないように慎重に進みます。
南極氷床の氷の量は、主に内陸での降雪による雪の堆積量と、氷山など沿岸から海洋へ流出する氷の量のバランスで決まります。雪の堆積量は氷床を大きくし、氷の流出は氷床を小さくすることに関わります。近年の人工衛星観測技術や数値モデル研究の発展によって、巨大な南極氷床の氷の変化量が明らかになってきています。
ドームふじチームでは、内陸における雪の堆積量に関する観測も実施しています。この観測では、氷床上のある場所で、ある期間に増加(減少)した積雪量を観測します。雪面に埋設した雪尺と称する長さ2.5メートルの竹竿を用いて、雪面から雪尺の上端までの長さを定規で測定し、前回測定時との差を求めることで、積雪量の変化を明らかにします。氷床上は積雪量が増える場所が多いので、雪尺はやがて雪に埋もれていきます。そのため、新しい雪尺をすぐ近くに立て直して、観測を継続しています。
氷床沿岸にあるS16観測拠点からドームふじ基地に至る、距離約1000キロメートルのルート上では、約2キロメートル毎に赤旗がついた雪尺が設置されています。また、12ヶ所では36本の雪尺を格子状に並べた雪尺網サイトや、50本もしくは101本の雪尺を1列に並べた雪尺列サイトが設置されていて、それぞれ1990年代の初めから30年間にわたって観測が行われています。広域にわたって、現在まで長期間行われている表面質量収支観測は、南極氷床上では他に例がありません。また、このデータは数値モデル研究結果の検証を目的として、国内外の研究グループに広く利用されています。竹竿の長さを測るというシンプルで地道な観測ですが、南極氷床の変動を明らかにするために、重要な役割を担っています。
(JARE64 津滝俊)