10月20日、ドームふじへの内陸旅行に必要な物資を積んだ大型橇を南極大陸上にある出発拠点へ移送する作業が行われました。これにより、63次越冬隊がこれまで進めてきたドームふじへの内陸旅行の準備がひととおり完了したことになります。
そこで、これまでの作業を振り返ってご紹介します。
内陸旅行に使用されるSM100型などの大型の雪上車を昭和基地のある東オングル島と南極大陸の間の海氷の上を移動させる場合、その重量に耐えられるように海氷が十分な厚さに発達している必要があります。夏期には海氷が薄くなるため、前回の内陸旅行で使用した大型雪上車や空になった燃料のドラム缶を積んだ橇などは、極夜明けまでは南極大陸への上陸地点付近のMS16に置かれており、極夜明けに昭和基地へ回送して整備や物資の積込を行うことになります。(MS16の位置については、この記事もご参照ください。)
そのため、極夜が明けて野外活動が再開された7月16日に、まずは雪上車や橇を移動させるためのルートの偵察が行われました。
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撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年7月16日)
南極大陸の上陸地点からMS16までの間には、氷河によって運ばれた岩石が堆積したモレーン帯という場所があり、雪上車で橇を牽引して無事に通過できそうかを確認しました。
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右)雪上車と橇を通すルートを検討する中澤隊員(左)と今西隊員(右)
撮影:JARE63馬場健太郎(2022年7月16日)
8月に入り、スキー場のゲレンデを整備するように、ブレードの付いた雪上車で雪を押してモレーン帯の斜面に雪を付ける作業を先行して行って、雪上車に牽引された橇が安全に通過できるようにし、8月16日から17日にMS16に置かれていた雪上車や橇を昭和基地へ移動させるオペレーションが行われました。
撮影:JARE63 中澤文男(2022年8月17日)・編集:JARE63 馬場健太郎
雪上車で橇を牽引して斜面を下るときは、橇が滑って前の雪上車に追突しないよう、2台の雪上車で橇の前後を挟む「列車」という方法で進みます。前後の雪上車はギアやエンジン回転数を調整して一定のスピードで斜面を下っていく必要があるため、細心の注意を払いながら運転します。
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右)北の浦に並べられた橇。例年にないほど多くの橇が北の浦に集まりました。(2022年8月27日)
撮影:JARE63 馬場健太郎
また、63次で南極に持ち込まれた新型雪上車の内装工事が行われ、昭和基地へ回送されてきた雪上車の整備作業もこの頃から本格化しました。
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中)自然エネルギー棟での雪上車の整備作業を行う装軌車両担当の吉澤隊員
右)雪上車の整備・清掃を手伝う隊員たち
撮影:JARE63馬場健太郎(2022年8月12日)
9月になると、昭和基地へ回送してきた橇から空になった燃料のドラム缶を降ろし、ヘリポートに集積してあった新しい燃料ドラム缶を積み込む作業が行われました。燃料を積み込んだ橇は、9月22日に南極大陸上(MS22~23付近)へ移送されました。
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撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年9月16日)
右)燃料を積んだ橇の大陸への移送作業
撮影:JARE63 三井俊平(2022年9月22日)
コンテナヤードでは、9月から10月にかけて、現在のドームふじ基地付近に新しく掘削場を建設するための資材を積み込む作業が行われました。また、居住モジュールの改装工事なども行われました。
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右)走行中の振動で荷崩れしないよう、入念に保定していきます。
撮影:JARE63馬場健太郎(2022年10月1日)
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コタツが設置されました。
撮影:JARE63 堀川秀昭(2022年10月17日)
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撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年10月20日)
右)MS22に集められた雪上車と橇
撮影:JARE63 堀川秀昭(2022年10月20日)
63次隊のドーム旅行メンバー6名は、現在南アフリカのケープタウンでフライト待ちしている64隊の先遣隊がDROMLANで昭和基地入りして最終的な準備を整えたのち、現地での作業期間50日を含む、往復約100日間にわたる内陸旅行へと出発することになります。
(JARE63 馬場健太郎)