雪上車講習(その2)

雪上車講習(その1)の続きです。

雪上車講習は、車両(雪上車)担当の吉澤隊員による44日の室内講義から始まりました。講義では、始業点検、エンジン始動・暖機運転、慣らし運転、走行と操縦、冷機運転・エンジン停止、終業点検といった雪上車を運用する際の基本的な作業の流れを学びました。また、雪上車には前回ご紹介したように様々な車種があり、車種ごとに点検項目などが異なるため、講義では動画を使って車種ごとの特徴も紹介されました。
その翌日の45日には、78名ずつ4班に分けられた隊員のうち2班が参加し、実際に雪上車を操縦する実技が行われました。

乗用車と異なり、雪上車はエンジンを始動してすぐに発進というわけにはいきません。まずは、エンジンオイル、冷却水、作動油などの始業点検を行ってから、エンジンの始動・暖機運転を行います。

エンジンオイルなど始業点検の項目を説明する吉澤隊員。
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)
履帯やタイヤなども重要な点検項目。足回りに雪や氷が付いていたら落とします。
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)

水温が上がってきたら、前進と後進を繰り返して慣らし運転を行い、ようやく雪上車で出発する準備が完了します。その所要時間は1時間から1時間半ほど。雪上車を動かすのは思った以上に大変です。

実技では、一人ずつ、SM30S型、SM40S型、SM60/65S型の各車種を前進・後進・旋回させ、一通り操縦を体験しました。

SM40Sを操縦する隊員。
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)
死角が大きいため、後進する際は後部のドアを開けて誘導してもらいます。
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)

その後、運転する機会が一番多いSM40S型で昭和基地の北に面する北の浦の海氷上に出て操縦の練習を行いました。また、橇の連結方法なども実習しました。

橇の連結方法を教わる隊員。
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)
北の浦から基地へ帰還する雪上車
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)

雪上車の運用には様々な配慮が必要です。それらを理解していないと、車両故障はもちろんのこと、基地施設の破壊や人員の負傷等により業務や越冬生活に支障をきたすことになりかねません。また、南極では車両が故障しても、部品の在庫には限りがあり、補給もままなりません。正しく理解したうえで雪上車を運用していきたいと思います。 

JARE63 馬場健太郎)