前回の記事「S16~DF移動中の観測」に続いて、ドームふじでの観測と作業の様子をご紹介します。
63次ドーム旅行隊は1月5日に本旅行2回目のドームふじに到着しました。気温は朝方でも-30度を下回らない日が続き、-40度に達することもあった1回目と比べると暖かく感じました。ドームふじには到着・出発日を抜いて合計12日の滞在です。滞在中は多数の観測と設営系の作業が行われました。そのうちのいくつかを紹介したいと思います。
■ドームふじ基地(DF2)掘削孔延長作業
本旅行のメインの作業の1つです。第2期ドームふじ氷床深層掘削で空いた穴は、基地が降雪に埋まるにつれて徐々に深くなり、基地の崩壊などがあれば穴の表面が埋まるリスクもあります。将来の掘削孔を使った観測のために掘削孔を維持する必要があるため、今回、掘削孔を表層付近までパイプを使って延長する作業を行いました。幸い掘削場内のウィンチが使用可能な状態だったため、作業は予定よりも早く3日で完了しました。合計で14mの延長です。-50度以下の極寒の中の作業でした。寒さで手足の指が取れるという声がしばしば聞こえました。
■氷床レーダー探査用雪上車へのアンテナ取り付け
こちらも本旅行のメインの仕事です。第3期ドームふじ氷床深層掘削に向けた最終のレーダー観測を行うため、アンテナを車両へ取り付けました。設置に3日、観測に7日を要する大きな仕事でした。
■自動降雪採取装置の設置
萌芽研究課題です。これまでドームふじでの越冬生活無しでは難しかった、冬季の南極の降雪を自動で採取しようという挑戦です。強風時、弱風時の降雪を漏斗で集め、集積部のサンプリングボトルがセットされているテーブルが回転することで、1月ごとに降雪を採取できるとのことです。現在は装置の基盤にトラブルがあったそうで修理に奮闘中です。成功を祈ります。
■積雪断面観測
同行者として参加している学生を中心に5.4mの深さの積雪断面観測を行いました。かなりの深さでしたが、体力自慢の若者によって、予定が短縮され3日で完了しました。最深部の雪温は-58度で、その場所の表面雪温の年平均値に近づきます。ピットの中での観測は手足の感覚が消え始めるので頻繁に休憩が必須でした。層位、雪質、雪温、密度、粒径、近赤外光反射率を観測するとともに、雪を深度3cm毎にサンプリングして帰国後トリチウムや各種イオンを計測する予定です。
■デポ物資整理
これらのデポ物資は来年度以降のドームふじ氷床深層掘削計画で使われます。走行ルートの風上に位置するドームふじ基地に対し、概ねルート上に整理されました。手前側から、掘削用のウィンチケーブル、燃料(ドームふじにデポされていたものを再配置)、今回持ち込んだ南極移動基地ユニット、奥に1回目に持ち込んだ掘削場の建築物資など。
■観測用橇掘り出し
今回のドームふじの滞在では観測系も設営系もてきぱきと仕事をこなしたため、ドームふじに設置された天文台のモジュール(現在は動いていない)と橇を引き出し、回収する作業を追加で実施しました。橇は圧雪車PB300とイケイケの設営メンバーによってあっという間に掘り出されました。PB300恐るべし。掘り出した橇は内陸旅行出発拠点のS16まで引いて帰ります。
滞在中、ドームふじではダイヤモンドダストが降り続いており、しばしば大気光学現象のオンパレードが見られました。
はじめは感動しつつも、慣れてしまう人も多いくらいです。
(JARE63 井上崚)