ドーム旅行隊は2度目のドームふじでの活動を終え、内陸旅行出発拠点のS16に向け復路の行動を開始しました。観測や設営作業で忙しい日々ですが、なんとか時間にゆとりができたため、我々の活動の様子をご紹介したいと思います。
まずは、移動中の1日の流れを紹介します。
1日はまず車両のエンジンをかけることから始まります。朝6時前後の仕事です。その後朝食を済ませて、車両の慣らし運転を30分以上かけて行います。
慣らし運転では車両のエンジンやデフ周りのオイルを温めます。この最中は車両らが前後に繰り返し走るため、その日の走行に備えて準備体操をしているかに感じられます。
その後、橇と連結し、午前中の走行に入ります。概ね7時30分から12時30分までの間に観測を交えつつ走ってきました。
12時30分から13時30分は燃料給油と昼休憩の時間です。
引く橇の重さにもよりますが雪上車の燃費は大体2~4L/kmです。燃料タンクは250Lなので、80km程度走行する1日を給油無しでは走り切れません。ですので、昼のタイミングで一斉に給油を行います。給油作業は燃料橇に車両を横付けし全員で協力して進める体力仕事です。何度も繰り返すので要領を得ると流れ作業になってきます。
昼食を済ませると、午前同様13時30分から18時00分~19時00分ころまではひたすら走行します。そしてキャンプインする際はまず給油を済ましたのち、車両を風上に向けて並べます。
360度地平線が雪原であるのは、慣れてしまうものの、やはり素晴らしい景色だと思います。
基本的に車両の間隔は、1車両が通り抜けられる程度の間隔は開けますが、ブリザードのときは別で、車両間を安全に移動できるように車間を詰めます。
車両を停車したら履帯周りの雪落とし、およびボルトの外れやオイル漏れなどの点検を行います。履帯周りは雪が凍り付いてしまっているので、この氷を落とすのはなかなかの力仕事です。無事に旅行を進めるためには欠かせない作業です。これにてキャンプイン作業はひと段落となり車内で一息を付けます。
キャンプイン後は生活するための仕事があります。水つくりは基本です。タイミングは朝昼夕様々ですが、ポリバケツにきれいな雪を詰めて車内の高温部に置いておくことで雪を融かして水を作ります。どこよりも不純物の少ない水の完成です。水の消耗は速いのでこの作業は頻繁に行います。
20時30分からは、全員が1つの車両に集まり昭和通信(昭和基地)との定時交信、チーム内ミーティングを行い、夕食を済ませます。夕食後は解散し、各人わずかな自由時間を過ごしたのち、明日の朝を迎えます
ちなみに本旅行では低軌道周回衛星を利用した衛星通信サービスを導入してインターネットを容量制限付きで使用できるようにしています。メンバーは国内の家族や友人と連絡を取ることができ精神衛生に良好です(一方で研究者はメールでの仕事がなくなりませんが…)。この点は本隊次での新たな試みです。また、NASも使用して必要書類や写真、動画もメンバーで共有しています。これらの機器を立ち上げる作業も日課になっています。
また、休日など時間があるときに限りますが、ドーム旅行では簡易シャワーを浴びたり、洗濯をすることができます。雪上車内で雪を溶かすと適温のお湯を作ることができるので、このお湯を海水浴場で使うようなシャワー用の容器に入れて使います。使用ペースは人それぞれですが、少なくとも数週間に1回の使用に限られるので、浴びた際はとてもリフレッシュすることができます。
以上のように体力的にも精神的にもハードな旅行かと思いますが、ネット環境や衛生面では利便性も向上しつつあると思います。引き続き旅行をなるべく快適にしていく努力が求められます。
(JARE63 井上崚)