地質調査第一弾

昭和基地のあるリュツォ・ホルム湾周辺は、約65億年前に存在した超大陸ゴンドワナの形成・分裂の記録を残した変成岩・火成岩が分布していて、リュツォ・ホルム岩体という名前が付いています。太古の岩石を調べることで、地球46億年の歴史を知ることができます。

63次隊では、3名の地質隊員が沿岸の露岩でテント生活をしながら調査をしています。第一弾として、昭和第一便の翌日の1217日に、リュツォ・ホルム湾の最奥にあるストランニッバという露岩へ飛び立ちました。ベースキャンプ立ち上げの日は強風が吹き荒れ、テント一つ立てるのに1時間かかる程で、時々おこる地鳴りのような強風に明け方まで寝ることができませんでした。
翌日からは、それほど強い風はなく、ほぼ快晴の中、露岩の端から端まで調査をしました。

1221日に4泊過ごしたストランニッバのベースキャンプ(BC)を立ち下げ、しらせのヘリコプターで10分程度のルンドボークスヘッタに移動し、再びBCを立ち上げました。ルンドボークスヘッタは幾つかの観測グループが訪れる南極の聖地の一つですが、我々地質屋にとっても聖地の一つです。リュツォ・ホルム岩体の中で変成度が最も高い変成岩が分布しています。またそれがとても綺麗な岩石で。是非多くの人に見てもらいたいものです。

8泊の調査ですでにぼろ雑巾のような3人ですが、しらせでのみなさんからの温かいサポートを頂きつつ2日間の休養を経て、調査第二弾として13泊の調査・野外生活へ向かう予定です。今度はあまり調査されていない露岩や着陸実績の無い露岩があり、かなりハードな調査になると思いますが、安全に遂行してきたいと思います。

JARE63 加々島慎一)

露岩を歩き回ります:全て一様な岩石ではなく様々な岩石が分布しています。目的の調査地まで道無き岩場を1時間ほど歩いて向かいます。中野伸彦隊員(手前)と馬場壯太郎隊員(奥)。
撮影:JARE63 加々島慎一(2021年12月19日)
ルンドの片麻岩と褶曲の露頭:ざくろ石、菫青石、珪線石などをふくむ片麻岩が層状になっています。奥には岩石が地下深くで強い圧力を受けてグニャグニャに曲がった褶曲露頭もみえます。写っているのは中野隊員。加々島隊員がこの露頭にくるのは17年振り。
撮影:JARE63 加々島慎一(2021年12月24日)
Grt-Crd-Sil gneiss:写真2の露頭の接写です。ルンドボークスヘッタの片麻岩、赤い鉱物がざくろ石(ガーネット)、青っぽくみえているのが菫青石(きんせいせき)、白い繊維状にみえるのが珪線石(けいせんせき)です。
撮影:JARE63 加々島慎一(2021年12月24日)
ハンマーで岩石を割ります:2kgのクラックハンマーで岩石を割ります。ルンドボークスヘッタ東部、写っているのは加々島隊員。
撮影:JARE63 中野伸彦(2021年12月22日)
30kgくらい担いでBCへ:採取した岩石試料をザックに入れて、BCへ戻ります。この日は30kg担いでいました。岩石試料を日本に持ち帰って詳しく観察したり化学分析をしたりします。
撮影:JARE63 中野伸彦(2021年12月22日)
露頭・氷河・馬場:ルンドボークスヘッタ東部にて、馬場隊員。
撮影:JARE63 加々島慎一(2021年12月24日)
ルンドBC:大きいテントが食事・通信テント兼中野隊員の寝室、小さいテント手前に馬場隊員、奥に加々島隊員が寝ます。物資は飛散しないように集積して適宜重しとなる岩石をのせています。天気が良いのでソーラーパネルで充電をまかなっています。
撮影:JARE63 加々島慎一(2021年12月23日)
クリスマスディナー:配給された糧食を工夫して食事を作っています。「居酒屋るんど」大将の加々島隊員渾身の一皿。
撮影:JARE63 加々島慎一(2021年12月24日)