10月8日、9日の2日間に分けて、福島隊員慰霊祭を実施しました。今回の慰霊祭は、故福島紳(ふくしま しん)隊員の遭難日である10月10日に合わせて、福島隊員のご遺体が発見された場所及び荼毘に付された場所を訪れ、ご冥福をお祈りするとともに、残り短くなった越冬期間の安全を祈念することを目的として実施しました。
第4次南極地域観測隊の福島紳隊員が遭難したのは1960年10月10日。当時、福島隊員は同僚の隊員と、カラフト犬の給餌を終え、現在の旧主屋棟付近から海氷上に置かれたソリの点検に向かったところ、ブリザードのために方向を見失い、行方不明になってしまいました。汚水処理棟横の福島ケルンが、福島隊員の最後の目撃地点とされています。
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撮影:JARE62 金城 順二(2021年10月9日)
福島隊員のご遺体は、1968年2月9日、西オングル島に地質調査できていた9次隊の隊員によって発見されました。最後に目撃された場所から、直線距離で4kmほど離れた場所です。
今回は、雪上車で移動したため、1時間ほどで到着しましたが、遭難時はA級ブリザードが吹き荒れ、視程が1mにも満たなかったそうで、どれほどの時間彷徨ってこの場所に到達したか、想像もつきません。
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撮影:JARE62 杉山 玄己(2021年10月8日)
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撮影:JARE62 西村 祐香(2021年10月9日)
この福島隊員の遭難をきっかけに、観測隊の安全対策はより強化され、外出注意令・禁止令を発令したり、ライフロープを張ったりするようになり、以後、観測隊員の死亡事故は起こっていません。福島隊員の事故による教えは、今日まで、そしてこれからも南極観測隊に生かされております。
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撮影:JARE62 杉山 玄己(2021年10月8日)
残りの越冬期間も4カ月を切り、12月には次の63次隊がやってきます。すっかり南極での生活に慣れてきた我々ですが、日本に帰るまで事故や怪我が無いよう、気を引き締め直す機会となりました。
(JARE62 金城 順二)