みなさん、こんにちは!LAN・インテルサット担当の三井です。
以前のブログで、「しらせ」では衛星電話を用いて日本と通信を行うことを紹介しましたが、昭和基地では、赤道上空36,000kmに打ち上げられているインテルサット衛星を介して、KDDI山口衛星通信所に設置されている巨大なパラボラアンテナとの間で通信を行います。今回の訓練では、実際に日本側の通信相手となるKDDI山口衛星通信所に出向いて、8月24日から8月26日の3日間にわたって、衛星通信設備の操作・保守方法を学びました。
衛星通信を担う設備は、大きく分けて、電波を送受信する「アンテナ」、送受信する電波に情報を乗せたり取り出したり(変復調)する「衛星モデム」、そして、電波を増幅する「増幅器」の3つから構成されています。今回の訓練では、衛星通信に関する知識を学ぶ座学から、上記の各装置の保守・操作に関する実習まで、幅広い内容を学びました。
実習では、まず3つの構成要素のちのアンテナに関する訓練から始まりました。訓練用のアンテナを用いて実際にアンテナを動かし、衛星を捕捉する操作やアンテナ駆動部にグリスを塗布する(グリスアップ)等の保守作業を行いました。ちなみに、昭和基地では年1回、アンテナのグリスアップを行います。
次の衛星モデムに関する訓練では、サーバラックに機器を設置する作業や、衛星モデムを操作する訓練を行いました。この操作訓練では、2台の衛星モデムを有線で接続することで擬似的に衛星通信環境を構築して、キャリア(通信データ)の送受信方法を学びました。何らかの原因で通信断に陥った場合、まずは衛星モデムのエラーログを確認し、原因の切り分けを行います。設備に障害が発生しているのか、それとも天候による一時的な障害なのかを判別するため、擬似的に障害を発生させて、障害パターンによるエラーログの出方の違いも確認しました(昭和基地では通信断になってほしくはありませんが…)。
最後に、増幅器の操作訓練を行いました。昭和基地では、送信側の増幅器にSSPA(Solid State Power Amplifier、固体電力増幅器)を使用しています。実際に訓練用のSSPAを用いて、所望の利得を得られるよう機器設定を行いました。アンテナから最終的に発出される電波の利得を考える場合、ケーブルや通過する各機器での減衰量も考慮する必要があるため、減衰量を測定する機器の使い方も併せて学びました。
無事に南極に到着した暁には昭和基地側の衛星設備を紹介できると思いますので、お楽しみに!
(JARE63 三井俊平)