5月23日から25日まで、越冬交代した62次隊では初となる野外観測旅行が行われました。(観測隊では基地以外の場所に行くことを旅行と言います)
当初はもっと早くに実施する予定でしたが、何度もブリザードが来てしまったので出発が延期されてしまいました。そのため、極夜が迫っており日照時間も短くなっているので、人員を縮小したり行程を短くしたりするなど計画を縮小しました。
今回の目的地はS16とS17という南極大陸にあるポイントです。その内容は①とっつき岬からS17までの雪尺観測、②S17にある無人気象観測装置のメンテナンス、③S16にデポ(Deposit:置いてあること)している雪上車の状態を確認して整備のためとっつき岬まで移動することを実施しました。
観測の道具と食料などを満載した3台の雪上車は23日朝8時30頃、まだ日の昇らない昭和基地を出発しました。一行はまず、南極大陸へ上陸する「とっつき岬」という場所を目指します。昭和基地周辺の大陸沿岸部は、ひじょうに切り立った氷の断崖絶壁となっており、雪上車が上陸できるゆるやかな斜面がある場所はごくわずかしかありません。そのなかでもとっつき岬は雪上車でも上陸しやすい場所となっています。
とっつき岬からは早速雪尺観測が始まります。雪尺観測はルート沿いに目印に立てている旗の高さを測ります。これは旗がどれくらい雪に埋まったのかを測ることで、南極大陸の積雪の状態を調べる研究に役立ちます。地道な作業ですが、場所によってほとんど変わらない場所もあれば、どんどん雪に埋まっている場所もあって、南極大陸では一様に積雪があるわけではないことがわかりました。
旅行中はS16にデポしていたSM100型大型雪上車に泊ました。この雪上車はドームふじ基地の遠征用に開発された雪上車で、キャンピングカーのように寝泊まりすることができます。中はひろく、電子レンジや炊飯器が置いてあり、みんなでご飯を食べるスペースや、2段ベットもあります。トイレは外ですけどね💦
食事は調理隊員が用意してくれた食材を使ってご飯を作ります。あったかいお鍋はとてもおいしかったです。
S17には無人気象観測装置(AWS)が設置されていますが、どうやら最近装置の電池が切れかかっているようで、その原因を探りに気象隊員が調査に行きました。原因は装置の電力を生む風力発電機が、ブリザードで雪に埋まったりして発電が不安定になっていることがわかりました。そのため風車をもう少し高くする作業を実施する計画が検討されました。
南極観測では自動で観測できる装置が多くなっていますが、定期的なメンテナンスや南極独特のトラブルに対処するにはどうしても人の手が必要となります。品質の良いデータを集めるためにも、観測隊は安全に越冬を続けています。
(JARE62 伊達 元成)