極夜のオゾン全量観測

昭和基地で行っている、オゾン全量観測について紹介します。

上空のオゾンは、生物に有害な紫外線から我々を守ってくれる役割を果たしています。
紫外線はUV-ABCの3種類に分けられ、その中でもUV-Bは地上に届いて生物に影響を与えます。
地上に届くUV-Bの強さと、上空のオゾン量には密接な関係があるため、オゾン量を定常的に観測することは、とても大切なことなのです。

3種類の紫外線とオゾン

 

南極・昭和基地のオゾン全量観測は、1961年に観測が開始されてからデータが蓄積されており、1982年春にオゾンホールを初めて観測したということは、よく知られています。

オゾン全量は、太陽の光を装置に取り入れ、オゾンに吸収されやすい紫外線と、オゾンに吸収されにくい紫外線の強さの比を測定することで、算出することができます。

オゾン全量観測の原理。オゾンに吸収されにくい紫外線の強さは、オゾンの量によってほとんど変わらないが、吸収されやすいほうはオゾンの量によって変わる性質を利用する。

 

しかし、太陽が雲に隠れるときや、太陽の高度が低いときは太陽の光が弱く、正確な値を測定できなくなります。さらに南極では、極夜の時期になると太陽は出てくることもありません。そこで、空から散乱された光や、月の光も利用することで、一年を通じてオゾン全量を測定しています。

条件によって3つの光を使い分ける

 

ドブソン分光光度計によるオゾン月光観測の様子。部屋を真っ暗にして月の光を装置に取り込む。
撮影:JARE62 蓜島 宏治(2021年5月24日)
昭和基地から見える月。 
撮影:JARE62 新居見 励(2021年5月25日)

 

南極では、春(9~10月)に、オゾン全量が少なくなるオゾンホールが例年観測され、その動向が注目されています。昭和基地のオゾン全量の変動を知るうえで、極夜期の月光観測は大切なデータとなります。

今年のオゾン全量は、どのように推移していくのでしょうか。
62次隊でも着実に観測データを蓄積していきたいと思います。

 

オゾン全量観測結果の月平均値。例年は春にオゾン全量が著しく小さくなる。ただし、2019年のように大気の大きな変動(成層圏突然昇温)によって、例外的な年もある。
(http://www.data.jma.go.jp/gmd/env/ozonehp/ozone_monthave_syo.htmlをもとに作成)

 

オゾン全量観測を行っている基本観測棟。辺りを明るく照らす月の光。 
撮影:JARE62 赤松 澪(2021年5月25日)

(JARE62 定常気象)