昭和基地は3月中旬から、荒天にしばしば見舞われてます。
空には雲が広がり、どんよりとした空模様。
低気圧が近づけは、風は吹き荒れ、雪が舞って吹雪となります。
以前のように青空が見えることは少ない日々が続いています。
そんな中、夕方からしばらくの間だけ、晴れ間が広がった時間がありました。
久々に見た西日にいざなわれ、日没を見るために外に出てみました。
海氷の向こうに沈みゆく太陽を見ていると、ダルマ型になっていることに気付きました。
さらに、地平線に沈んでゆく太陽は、円形ではなく横に長く、四角い形をしていました。
これらの特殊な太陽の形は、蜃気楼によってできたものです。
この前後の高層気象観測の結果を見ると、晴れたことによって地表付近の空気の温度が一気に下がり、逆転層(上空に行くほど気温が上がる層)が強まっていたことが分かります。
日没は30日の18時頃。
太陽の光を屈折し、不思議な形を作り出していたのは、この気温の層だったのでした。
太陽が沈みきったあとの西の空は、オレンジから深い青へと変わってゆく見事なグラデーションを見せてくれました。
嵐の間のつかの間のひとときは、私にとって、とても感銘深いものでした。
(JARE62 新居見 励)