嵐の間の夕日

昭和基地は3月中旬から、荒天にしばしば見舞われてます。

ブリザード前に見えたハロ
撮影:JARE62 新居見 励(2021年3月21日)

空には雲が広がり、どんよりとした空模様。

低気圧が近づけは、風は吹き荒れ、雪が舞って吹雪となります。

強風により雪が舞う 
撮影:JARE62 新居見 励(2021年3月26日)
ブリザード。猛烈な風と、無くなる視程
撮影:JARE62 新居見 励(2021年3月28日)

 

以前のように青空が見えることは少ない日々が続いています。

 

そんな中、夕方からしばらくの間だけ、晴れ間が広がった時間がありました。

日の傾いた西の空
撮影:JARE62 新居見 励(2021年3月30日)

 

久々に見た西日にいざなわれ、日没を見るために外に出てみました。

夕日に照らされる居住棟
撮影:JARE62 新居見 励(2021年3月30日)

 
海氷の向こうに沈みゆく太陽を見ていると、ダルマ型になっていることに気付きました。

ダルマ型の夕日
撮影:JARE62 新居見 励(2021年3月30日)

 

さらに、地平線に沈んでゆく太陽は、円形ではなく横に長く、四角い形をしていました。

横長の太陽
撮影:JARE62 新居見 励(2021年3月30日)

これらの特殊な太陽の形は、蜃気楼によってできたものです。

この前後の高層気象観測の結果を見ると、晴れたことによって地表付近の空気の温度が一気に下がり、逆転層(上空に行くほど気温が上がる層)が強まっていたことが分かります。

3月30日15時、31日3時(現地時間)の気温の分布。

日没は30日の18時頃。
太陽の光を屈折し、不思議な形を作り出していたのは、この気温の層だったのでした。

太陽が沈みきったあとの西の空は、オレンジから深い青へと変わってゆく見事なグラデーションを見せてくれました。

日没後の空
撮影:JARE62 新居見 励(2021年3月30日)

嵐の間のつかの間のひとときは、私にとって、とても感銘深いものでした。

 

(JARE62 新居見 励)