海氷安全講習

短かった夏も終わり、気温がマイナス二桁まで下がる日も増えてきました。これから、長い冬が始まるのを前に、海氷安全講習が315日~17日に実施されました。
昭和基地は、南極大陸から約4km離れた東オングル島という島にあるため、大陸へ向かうためには海氷上を移動する必要があります。
海氷とは、文字通り海水が凍って固まったもので、海氷の下は海になっています。
海氷は潮の満ち引きや風の影響などで割れることがあります。割れ目は、深いところでは6m近くになることもあり、転落してしまうと自力での脱出は困難になります。特に、ブリザードの後などは、雪に隠れて割れ目が見えなくなることもあるため、海氷上で活動する際は常に注意が必要です。

講習は座学と実技に分けて実施されました。座学では、海氷上での行動時に注意すべきことや、ルート工作の方法、氷厚測定のやり方等を学びました。

久保木隊員(野外観測支援担当)による講義の様子
撮影:JARE62 赤松澪(2021年3月15日)

 

実技では、実際に海氷に出て、どういった場所が危険かを確認しながら、海氷上を移動する訓練を実施しました。
昭和基地の周辺には、「タイドクラック」と呼ばれる潮の満ち引きでできた割れ目が多くあり、注意して進まないと、事故や怪我に繋がります。タイドクラックを渡る際は、「ゾンデ棒」と呼ばれる金属の長い棒を海氷に差しながら、歩ける場所を確認して一歩ずつ進みます。

基地周辺に出来たタイドクラック
撮影:JARE62 金城順二(2021年3月16日)
ゾンデ棒を差して歩ける場所か確認しながら進みます
撮影:JARE62 金城順二(2021年3月16日)
何もないように見える場所にも割れ目が潜んでいます
撮影:JARE62 金城順二(2021年3月16日)

 

また、海氷上にドリルで穴をあけ、海氷の厚さを測る訓練も実施されました。海氷上では、徒歩以外に、雪上車やスノーモービルで移動することもあるため、人は通れても車両は通れない、という場所もあります。車両が安全に通れるルートを作るためにも、海氷の厚さを正確に把握するが重要になります。

海氷にドリルで穴を空けて厚さを測ります
撮影:JARE62 金城順二(2021年3月16日)

 

これから、昭和基地を離れて野外での活動も徐々に増えてきますが、事故や怪我がないように活動するためにも、こうした日々の訓練を積み重ねていくことが重要だと感じました。

(JARE62 金城順二)