南極圏に位置する昭和基地は、12月から1月まで、白夜となり夜が来ません。沈まない太陽も魅力的なのですが、日が沈むようになってくると別の素敵な現象が見れるようになります。その一つがオーロラです。宇宙から降り注ぐ高エネルギーの粒子が地球の大気分子にぶつかり、そのエネルギーが光となって放出されるのです。地球には磁場があるので、降り注ぐ粒子は極地に集まり、オーロラとなって観測されます。
2月下旬から昭和基地は秋を迎え、少しずつ夜が長くなるとともにオーロラが見えるようになってきました。そこで私たちのチームはオーロラカメラを中心とした光学観測機器の準備を始めました。オーロラを撮影するための特別なカメラは非常に高感度な装置です。そのため観測が行われる夜の間は昭和基地の照明を落とし、窓には遮光カーテンを引きます。そして、日が沈む直前に各棟の窓から光が漏れていないかを確認するのも日課となりました。
そうして準備を整え待つこと数日、ついにオーロラがきれいに見れるようになりました。私にとっては初めてのオーロラで、風が吹いていないのにゆらゆらと広がる光の帯に感動しました。まだまだ空は若干明るいのでそれほどくっきりとは見えませんでしたが、ずっと憧れていた現象を自分の目で見ることが出来、夢中で自分のカメラのシャッターを切りました。またこの感動を共有しようと他の隊員に向けて無線を入れました。
朝になって観測装置を確認すると、昨晩のオーロラがしっかり記録されており、ひとまずほっとしています。夜間の観測は大変ですが、素晴らしい自然現象をこの目で見、その場でデータを取れる喜びはそれに勝ります。これから昼が長くなる10月まで無事に観測を行えればいいなと思います。
(JARE62 杉山玄己)