VLBI観測

2月23日の昭和時間20:30(17:30UTC)から翌24日の昭和時間20:30(17:30UTC)までの24時間、昭和基地では「多目的衛星受信アンテナ(多目的アンテナ)」を使ったVLBI(Very Long Baseline Interferometry、超長基線電波干渉法)観測が実施されました。


VLBIとは、遥か彼方の天体から発せられる電波を、世界中の複数のアンテナで受信し、受信する時刻を比較することで、アンテナ間の距離(数1000km)を数mmの精度で測定する観測法です。この観測で得られたデータは、地球回転の向きやプレート運動の研究等に活用されています。
昭和基地にはこの観測のために、直径11mのパラボラアンテナと原子時計(水素メーザー)が備えられています。

VLBI観測のイメージ図
VLBI観測のイメージ図
多目的アンテナ
直径11mのパラボラアンテナで、天体から発せられる電波を受信します。
撮影:JARE62 戸塚慎介(2021年2月8日)

レドーム
多目的アンテナは高さ17mのレドームの中に入っています。
撮影:JARE62 金城順二(2021年2月24日)

原子時計は、原子から放射される電磁波の周波数が極めて正確であることを利用しています。水素メーザーは安定度※が10-14程度と、約300万年に1秒しか狂わず、現在実用化されている最も高精度な原子時計です。

※安定度・・・誤差/経過時間。例えば1日に0.1秒狂う時計があるとすると、安定度は0.1秒/86400秒(=24時間)≈10-6となる。

原子時計
昭和基地でのVLBI観測に使用している水素メーザー原子時計。
撮影:JARE62 西村祐香(2021年2月25日)

62次隊では24時間観測を11回実施予定で、今回はその2回目になりました。

1回目の前回は、1月17日~18日に実施され、前次隊からの引継ぎを兼ねて実施されたため、62次隊だけでの実施は今回が初めてです。

観測を担当する西村隊員(地圏モニタリング担当)と戸塚隊員(多目的アンテナ担当)の2名は、前々から綿密な準備を進めていました。

テスト
アンテナの軸がずれていないか確認するためのテストを行う戸塚隊員。
撮影:JARE62 西村祐香(2021年2月22日)

観測中は、機器が正常に動作しているかを常に監視する必要があり、さらに定期的にアンテナから収録装置に至るまでのケーブル遅延量をメモしていくため、24時間気を抜くことが出来ません。

観測中
観測中の様子。
撮影:JARE62 赤松澪(2021年2月24日)

無事に観測を終えた西村隊員は「62次隊のみで行う初めてのVLBI観測だったので緊張しましたが、無事に観測が終わりホッとしています」と語り、同じく戸塚隊員は「アンテナが問題なく稼働しているか24時間気の抜けない観測でした。次回の観測に向けてアンテナのメンテナンスをしっかりと行っていきたいです」と語っていました。

観測終了時
無事に観測を終えた西村隊員(左)と戸塚隊員(右)。
撮影:JARE62 金城順二(2021年2月24日)

こうした地道な観測は日々行われており、昭和基地での重要なミッションの1つとなっています。


(JARE62 西村祐香・戸塚慎介・金城順二)