昭和基地で見た絶景

南極といえば、白い大地、青い空、沈まない太陽、オーロラ・・・こういった、大自然の絶景が想像されるかもしれません。

今回は、そのいずれでもない絶景について共有したいと思います。

2月2日の午前1時過ぎ、居室の窓のカーテンが暗いことに気付きました。この時期は夜の遅い時間でも、カーテンの隙間から光が差し込んでくるはずだが・・・。違和感を抱いた私は、外の様子を見るためにカーテンを開けてみました。

すると、あたりは真っ白。視程は非常に悪く、見えるはずの南極大陸も、その手前の海氷も、そして近くの岩山ですらハッキリと見えません。

視程は間違いなく1km未満。

 

霧です。

 

様子を見るために、外に出てみることにしました。

「昭和基地」の看板を取り巻く霧 
撮影:JARE62 新居見 励(2021年2月2日)
左)霧に覆われた雪上車たち 右)小高い丘から基地を見下ろす。霧に包まれた車両、居住棟、基本観測棟
撮影:JARE62 新居見 励(2021年2月2日)

その後、気象データを確認しに気象観測をしている部屋へと向かいました。

データを見てみると、ある時間から湿度は急激に上がり、そのタイミングで視程が急激に落ちていることが確認できました。夜勤者の当番者とともに、霧の成因などについて議論を交わします。

霜のついた測器。海氷側だけに霜が付いていることから、この霧は海から侵入してきたことが推測されます 
撮影:JARE62 新居見 励(2021年2月2日)

そして、気象観測器の状態を確認しに、屋上へ。

すると、目の前には霜のおりた測器。

霜のついた測器 
撮影:JARE62 新居見 励(2021年2月2日)

 

そしてあたりに目をやると、霧に包まれて厳かな雰囲気が昭和基地を取り囲んでいることに気付きました。

霧に覆われた海氷域と、空に浮かぶ月 
撮影:JARE62 新居見 励(2021年2月2日)

 

そうこうしているうちに、徐々に視程は回復してゆき、あたりの様子が明らかになっていきます。

徐々に見え始める南極大陸の地平線 
撮影:JARE62 新居見 励(2021年2月2日)

 

そこで、見え始める絶景。

海氷の上に広がる雲海と、南極大陸 
撮影:JARE62 新居見 励(2021年2月2日)

 

雲海です。

 

左)海氷域に広がる雲海、空には多様な雲、そして浮かぶ欠けた月 右)基地を取り巻く雲海
撮影:JARE62 新居見 励(2021年2月2日)
霧に覆われたアンテナ島 
撮影:JARE62 新居見 励(2021年2月2日)

 

その後、霧は晴れて、いつもの美しい朝の空が広がりました。

霧の晴れた朝の空 
撮影:JARE62 新居見 励(2021年2月2日)

 

南極だから・・・というイメージと、ひと味違う姿。

 

予想できる現象にも感動はあります。

でもそれ以上に、こういった予想外の現象に出会える瞬間こそが、本当の驚きと発見、そして感動を与えてくれるのではないか。

 

そう感じたひとときでした。

 

 

(JARE62 新居見 励)