2月1日の早朝、水平線近くにある氷山が、伸びて、浮き上がって見えました。
でも数時間後には消えてしまったので、気づいた隊員は、少なかったようです。
この蜃気楼、越冬中の昭和基地周辺では時折みられる現象で、上位蜃気楼といいます。地上付近がよく冷えて、上空の空気との間に大きな温度差(密度差)がある時に現れます。
早速、気象部門が毎日気球を揚げて観測しているラジオゾンデによる高層気象データ(このデータは気象庁HPでも見られます)を見てみました。
蜃気楼が見えた2月1日の朝6時頃に一番近い観測は、2月1日2時30分の観測データです。地上の気温は-8.4℃ですが、高さ240mくらいまでは、上空より低い温度になっている傾向(接地逆転層という)が顕著になっていました。その後の14時30分のデータではその傾向がみられませんので、蜃気楼が消えたのも納得です。
一般に対流圏では、上空に行くほど気温が低くなるのですが、この日の前夜は、風も弱く、快晴だったため、放射冷却によって地上の気温がよく冷えたものと思われます。
昭和基地周辺の蜃気楼、寒い季節に現れるのは、珍しいことではありませんが、この時期に見られるのは、そろそろ夏の終わりを告げているのかもしれません。
(JARE62 阿保敏広)