西の浦験潮所での副標観測

東オングル島西側の小さな湾は西の浦と呼ばれ、海上保安庁が設置した水位計による潮位観測が行われている。この観測は第12次(1971年)に開始されて、数回の水位計の更新を経て、現在は自動連続観測によりリアルタイムでデータが公開されている。水位計の測定データを潮位に変換するには、現場で、水位計と潮位を直接比較する較正が必要で、このために副標観測と呼ばれる観測が毎夏行われている。潮位は、海図の作成には欠かせない情報であるとともに、その観測値には潮の満ち引きや海のうねりのような比較的短い周期での変化、そして、地球温暖化などに伴う平均水面の変化も含まれる。このように潮位観測は様々な面から有用かつ意義深い。

氷を砕く
撮影:JARE62 橋田元(2021年1月11日)
やぐら建設中
撮影:JARE62 吉田夏希(2021年1月11日)
やぐら建設完了
撮影:JARE62 吉田夏希(2021年1月11日)

 

副標観測は、海上保安庁から派遣された隊員の主要業務の一つである。今年は、夏期の活動が1か月間と短いことに加え、西の浦周辺の海氷の融解が遅かった。副標となる標尺の設置を予定していた地点には、大きな海氷の塊が溶けずに残っていたため、氷を砕いてから、金属パイプでやぐらを組んで、標尺を設置した。2021111日の深夜から早朝にかけて、幾度となく繰り返される副標の目視観測が、沈まない太陽の下、パドルができ始めた西の浦で行われた。

水準測量
撮影:JARE62 吉田夏希(2021年1月11日)
副標観測
撮影: JARE62 橋田元(2021年1月11日)

 

JARE62 吉田夏希・橋田元)