現在、「しらせ」船内では南極に着いてすぐに『ヘリオペ』(ヘリコプターオペレーションの略称)を実施するため、隊員たちが着々と準備を進めています。
観測隊でヘリコプターを利用する場面は、昭和基地~「しらせ」間の物資・人員輸送全般と昭和基地以外での野外観測・設営計画実施のための物資・人員輸送の2つに大きく分けられますが、観測隊で『ヘリオペ』という言葉を使う時は後者を指します。※前者は運ぶ時期によって優先空輸、本格空輸などと呼ばれます。
近年の観測隊ではオーストラリアにて搭載する小型ヘリコプターが多くの『ヘリオペ』を担当していましたが、62次隊は他国へ寄港をしないため2機の大型輸送ヘリコプター(CH-101)のみが夏の忙しい空輸の合間を縫って野外へ飛んで行きます。62次隊の『ヘリオペ』では各種観測・調査や観測機器のメンテナンス等、継続していくこと自体が重要なミッションを中心に行います。
各種『ヘリオペ』の様子は後々このブログでご紹介できると思いますので、今回は『ヘリオペ』の際に野外で食べる糧食(食料)の準備についてご紹介したいと思います。前置きが長くなってしまいましたね。
糧食準備は必要な食材リスト作成から始まります。
野外糧食には「しらせ」が調達した食材を使用するので、食材の一覧からそれぞれのミッションやメンバー構成に応じたメニューを考える…のですが、野外に出る隊員は炊事面でもベテラン揃いなので専ら何を食べたいかというお腹の空く話し合いになりがちです。
メインのメニューに使用する食材に加え、天候悪化等によって野営が長引いた場合の予備食、乾パンなどの緊急時に消費する非常食の必要数も計算し、必要な食材リストを完成させていきます。
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撮影:JARE62赤松 澪(2020年11月25日)
リストが完成したらいよいよ各チームへの食材配布が始まります。
食糧庫からの搬出作業は人力なので観測隊員全員が参加しての作業となります。
まずはバケツリレーしながら種類ごとに集積していくのですが、食材の中には食糧庫スペースの都合で外箱と中身が一致しないものがあるので仕分け先を指示する隊員は気を抜けません。

撮影:JARE62 阿保 敏広(2020年12月4日)
次に野外チームへの仕分けを行います。
各種類の食材の山から必要な食材を探し出し、各チームの机へ持っていきます。通称お買い物タイムです。
必要な食材と数量を言えば机周りの隊員が配送するサービス付きなので、野外チームの隊員だけではチェックが中々追いつきません。
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撮影:JARE62赤松 澪(2020年12月4日)
大きな塊肉は調理隊員がそれぞれの用途の大きさに切り分け、真空パックにして持ち出す準備を整えていきます。
夏期間の調理隊員は昭和基地の厨房引継ぎ等で大忙しのため野外チームには入っていませんが、料理のプロが扱い易さを考慮して切ってくれたお肉を野外で食べられるのは有難いことではないでしょうか。
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撮影:大友 康太朗(2020年12月5日)
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撮影:JARE62 金城 順二(2020年12月5日)
こうして全ての食材が揃ったら各チームの行き先別に箱詰め後保管します。
常温保存可能な飲料・乾物類はあまり使用しないスペースなどに保定しますが、冷凍品や生鮮品は冷凍庫・冷蔵庫にて出発の時を待つことになります。
冷凍庫内は-17℃前後ですが、搬入作業をしていると身体がすぐに熱くなってきます。
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撮影:JARE62 赤松 澪(2020年12月4日)
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撮影:JARE62大友 康太朗(2020年12月6日)
今回は夏の観測の花型とも言える『ヘリオペ』を裏側から紹介してみましたが、いかがだったでしょうか。
62次隊は新型コロナウイルスの影響もあり、日本国内で全員集まる機会を中々作れないでいましたが、このような作業を通じてチームワークが強化されつつあると実感しています。
限られた隊員、限られた期間で出来る限りの成果を上げられるよう昭和基地へ飛び立つその日まで隊員一同準備を続けていきます!
(JARE62 大友 康太朗)