グリーンフラッシュ。
空気が澄んで水平線に雲がないとき、太陽が沈むときに緑の光が煌めく一瞬の現象。
夕食後、私は船酔いで気分が少し悪かったので、外の空気を吸うために、しらせの甲板に上がりました。
そこには誰もおらず、私一人でした。
天気は快晴。視程は推定100km以上。
空を見ると、太陽が西の空に傾いていました。
ただ壮大で、美しい大海原の眺めを独り占めしました。
そのとき、ふと思ったのです。
今日はグリーンフラッシュが見えるのではないか。
そこで、夕方のミーティングで皆に共有してみました。
「今日は、グリーンフラッシュが見えるかもしれません。」
すると、日没少し前に多くの方が集まってくれて、ぞろぞろと甲板に上がることになりました。
しかし、甲板に上がってみると、西の空には雲。
高積雲が水平に長く広がっていたのです。
「しまった・・・。」
皆にすまないと思いました。
しかし、よく見てみると、雲と水平線の間には、わずかな隙間が空いています。
そこに太陽が沈めば見えるはずだ。
それを信じ、日が沈むのを待ちます。
叩きつけるような風がしらせ前方から吹いてきます。
ぶれるカメラを一脚で支えながら夕陽に向けます。
太陽が雲の後ろに一度隠れます。
太陽は水平線と雲の隙間に下りてきてくれるだろうか。
右側の水平線と雲がつながった部分に太陽が下りてしまうと、グリーンフラッシュは見えません。
祈るように、太陽が出てくるのを見守ります。
太陽の下端が雲の下から見えてきました。
「これなら、必ず見える!」
時間は19時4分。太陽はどんどん沈んでいきます。
そして太陽が沈み切る直前、一瞬の緑のきらめきをカメラに収めることができたのです。
時間にするとほんの数秒の出来事でした。
緑の光が消えた後は、淡い紫の光が一瞬だけ見えるのです。
時間は、19時5分。
「ただいま、日没。」
艦内アナウンスが入りました。
「見えた見えた!」という声が聞こえる一方、「全然わからなかった!」という声も聞こえてきました。
私が強い風から逃げるように船内へと戻る途中、きれいに緑の光を写真に収めた人が皆に拍手を浴びているのを目にしました。
「よかった。」
私がこの現象を始めて目にしたのは、以前勤務していた南鳥島の砂浜からでした。
その時はカメラを持っておらず、ただひとり、目に焼き付けて帰りました。
多くの人と、この現象を共有できたことに喜びを覚えた一日でした。
(JARE62 新居見 励)