ペンギンの生息数を調査するペンギンセンサスに参加してきました。
10月を過ぎると、産卵と子育てのためにアデリーペンギンが陸地の高台にルッカリー(集団営巣地)を形成します。大規模なルッカリーが作られる場所は毎年決まっており、観測隊では毎年、昭和基地近辺の大きなルッカリーに赴いて個体数調査が実施されています。
今回は、スノーモービルを使って半日でまめ島、オングルカルベン、弁天島を巡るやや強行なスケジュールとなりました。
どの島に行っても、あの短い足でよくもわざわざこんなところまで登ったものだと感心するような山頂近くにペンギンが群れています。これは低い場所だと巣の中に冷たい雪解け水が流れ込んだときに卵が死んでしまうので、高台に巣を作るためだそうです。
さて、ペンギンの個体数調査の方法ですが、21世紀になって早20年が経過した今になっても、人間の目視とカウンターによる由緒正しい方法により行われています。ある程度の年齢の方だと、紅白歌合戦の最終投票で日本野鳥の会の方々が、客席の紅組と白組の票を数えていたことをご記憶かと思いますが、まさにあの通りです。ここで、「数十羽程度ならともかく数百羽、ましてやちょこまかと動き回る相手を正しく数えられるのか」と疑問を持った方もいらっしゃることでしょう。そこは、実際に数を数える当人も最も心配していたところですが、「同じルッカリーで、3人以上がそれぞれが3回数えてその平均を取る」こととされており、心配も少し和らぎました。
今回の調査の結果、まめ島で600羽弱、オングルカルベンは3箇所あってそれぞれ約450羽、300羽弱、200羽弱、弁天島が約160羽が確認されました。いずれも例年よりかなり多い数で、今年は何らかの理由で南の陸地に移動できないせいで、どこも個体数が多く、密度が高くなっているのかもしれません。
世はコロナ禍でソーシャルディスタンスの徹底が求められていますが、ここ南極のペンギン界では、そうした配慮は無縁のようです。
(JARE61 佐藤丞)