南極オゾンホール

南極と聞いて皆さんは何を連想するでしょうか?ペンギン、アザラシ、オーロラ・・・と魅力的なことばかりではありません。そのひとつがオゾンホールです。

オゾンホールは人為的な影響で大気中に放出されたフロンガスが原因となり、南極上空のオゾン量が極端に少なくなる現象で、毎年89月ごろ発生し、1112月ごろに消滅します。

ここ、南極昭和基地で行っているオゾン量の観測は、大気中のオゾンを直接測定するオゾンゾンデ観測と太陽光・月光を使って測定するオゾン分光観測があり、1961年、第5次隊で調査観測として行った後、オゾン分光観測は第7次隊 (1966) から、オゾンゾンデ観測は第9次隊(1968)から定常観測として現在まで継続して実施しています。

中でも第23次隊(1982)で行った観測は、世界で初めてのオゾンホールに関する発表につながるなど、観測隊の大きな成果として評価されています。

オゾンゾンデを飛揚する気象隊員
撮影:JARE61 高見英治(2020年8月2日)

オゾン月光観測の観測器間比較を行う隊員
撮影:JARE61 粕川貴裕(2020年5月8日)

 

今年のオゾンホールはその面積・欠損量とも過去10年間の最大値と同程度で推移しています。オゾンホールに覆われると地上にふりそそぐ紫外線量が多くなるので、10月下旬の今、正午ごろに太陽は関東の冬と同じくらいの高さなのに紫外線量は関東の初夏と同じくらいです。さらに、紫外線は周囲にたくさんある雪や氷で反射しさらに強まります。屋外で作業する時は、日焼け止めやサングラスなど紫外線対策を欠かすことはできません。

 

南極オゾンホールは回復傾向にあるとされていますが、オゾン層の破壊が顕著になる1980年以前と同程度になるのは2060年代になってからと予測されており、回復にはまだまだ時間がかかります。

これからも高精度な観測を行い、オゾン層の監視に役立てるよう、日々業務に取り組んでいきます。

 

JARE61 気象定常部門)