無人航空機訓練

昭和基地では、天気予報でおなじみの気温・湿度・気圧といった大気観測のほかに、空気中の微粒子の観測もしています。
エアロゾルとよばれるその微粒子は日本では人間活動に伴う大気汚染の指標として重要な情報です。一方、南極域は海洋に囲まれており、中緯度域の大陸や人間活動からは隔離された状態にあるため、人間活動起源のエアロゾルはとても少なく、海塩粒子などの自然起源のエアロゾルが大半を占めることが知られています。そして、大気中に浮遊しているエアロゾルの濃度や化学成分を、さまざまな場所や高度で調べると、地球大気がどのように循環し、どのような物質が移動・反応していくのか知ることができます。これは、地球温暖化やオゾンホールの仕組みの解明や、今後の予測を行ううえで非常に重要な手がかりとなります。

62次隊では、カイトプレーンという無人航空機(UAV)に観測装置をのせて、上空3kmまでのエアロゾル観測を実施します。
まずは観測隊員がカイトプレーンの取り扱いに慣れるため、大分県竹田市にある久住滑空場でその訓練が行われました。8月17日から21日までの期間、機体の整備・手動操作と自動操縦、観測装置の取り扱いなどたくさんの訓練項目を実施してきました。

撮影・編集:JARE62

 

操縦を担当した柴田隊員は、「久しぶりの操縦で緊張しましたが、着陸もうまくできて安心しました」と満足そうに語ってくれました。
カイトプレーンは小さなボルトや配線が多く、精密機械の塊です。地上から機体の制御を担当した戸塚隊員は「自動飛行中は、想定のルートを飛行しているか非常に緊張しました。より正しく飛べるようにパラメータの設定精度を上げていきたいです。」と真剣に制御ソフトの画面に向き合っていました。
また、私(伊達)は観測装置の搭載を担当しました。気温32℃の炎天下では汗だくになりましたが、良好なデータが取れるよう南極での観測が楽しみです。

 

JARE62 伊達 元成)