航空拠点を掘り起こせ

昭和基地の東約20kmの地点に「S17航空拠点(S17)」と呼ばれる場所があります。

ここには、ドロンイングモードランド航空網(DROMLAN)の大陸内飛行用航空機などが離発着可能な滑走路があります。

このS17には航空拠点小屋や航空機の給油用の燃料橇が置かれています。小屋に関しては、2009年以降、ドロンイングモードランド地域の積雪増加により、2019年頃から積雪でほぼ屋根まで埋まってしまいました。今回、小屋と燃料橇の掘り起すミッションのため、S17へ行ってきました。

ドロンイングモードランドの積雪が増加し始める前のS17航空拠点小屋
撮影:JARE49 青山 雄一(2008年1月中旬)
埋もれる前のS17航空拠点小屋
撮影:JARE54 小久保 陽介(2013年1月22日)
S17へのルート
埋まってしまったS17
撮影:JARE61 吉井 聖人(2020年7月21日)

上の写真(20131月当時) から約7年でこんなにも埋まってしまっていました。また、積もった雪は融けずに次の年にまたその上から積もっていきます。そのため、下に行くほど圧縮され、フィルンと呼ばれる雪と氷の中間くらいの状態になります。フィルンはとても固く締まっており、人の力だけで掘り起こすことは困難です。

実は極夜前に一度掘り起こそうとしたけれども、固く締まった雪に阻まれて断念しております。今回は秘密兵器として重機を持ち込んでのリベンジです。

重機を使った掘り起こし作業
撮影:JARE61 吉井 聖人(2020年7月21日)

まずは重機を使って建物の周辺を掘り起こし、最後は人の手で、建物の周りについた雪や氷を慎重に落としていきます。

掘り進むにつれ、固まった雪は次第に氷へと変わっていき、最後は工具を使って氷を砕きながら埋まってしまったS17航空拠点小屋の扉が開くまで掘り進めました。

最後に、扉が再度雪で埋まらないように枠で囲み、深く掘り進めなくても建物内に入れるように天板を付けて作業終了です。

扉が埋まらないように枠を付ける作業
撮影:JARE61 吉井 聖人(2020年7月21日)
作業を終えての記念撮影
撮影:JARE61 吉井 聖人(2020年7月21日)

他にも、メンテナンスや、埋まりかけた橇の掘り出し作業などを行いましたが、

極夜明け直後ということもあり、明るく作業のできる時間が限られていたため途中でやむなく撤収。

気象計のメンテナンスをする隊員
撮影:JARE61 吉井 聖人(2020年7月21日)

また、翌日も橇の掘り起しなどを予定していましたが、今後天候が悪化する予報が出たため安全を最優先し、昭和基地に帰還することになりました。

最後に昭和基地へ帰る日の朝、嵐の前の静けさかきれいに晴れ渡り、オーロラが顔をのぞかせてくれました。

S16(S17から約1kmの地点)でのオーロラ
撮影:JARE61 吉井 聖人(2020年7月22日)

(JARE61 吉井 聖人)