「海鷹丸」観測終了

1月31日、気温5.5度、水温6.3度。だいぶ暖かくなってきました。北に来るにつれ防寒下着が一枚、また一枚と減っていきます。だんだんと季節が冬から春になっていくようです、が、いまは真夏です。

 

9時、この航海最後のネット観測が始まりました。 このホバートへの帰路の途中、南緯55度付近でのネット観測は今回が初めて。実は、この海域はハシボソミズナギドリの餌場のひとつと推定されています。このトリには以前も触れていますが、南極海と北極海の間の長いながい渡りをする海鳥です。南半球の夏季、つまり今の時期にタスマニア周辺で子育てをし、南半球が秋から冬になる時期には、日本を経由してベーリング海や北極海まで旅をします。この海鳥がどうしてこの海域を餌場としているのかは分かっていません。海鷹丸は毎年東経110度の観測ラインの海洋物理化学のモニタリングを実施しながら南下し、そのホバートへの帰りにこの海域を通っています。そこで私たちは、海鷹丸でしかできない研究プロジェクトを開始しました。ハシボソミズナギドリはなぜこの場所を餌場として選んでいるのか、というのが研究テーマです。北大のチームとの共同研究です。各種の観測が行われますが、必須なのは餌生物候補の採集です。大型フレームトロールネットMOHTの観測が、魚類や動物プランクトンが表層まで上がってくる夜間に行われました。

大型フレームトロールネットMOHTの観測風景。
撮影:JARE61 茂木正人(2020年1月31日)

大しけの確立が高いこの海域で今夜はベタ凪ぎという幸運もあり、餌の候補と目論んでいるハダカイワシ科魚類が大量に採集されました。夜は更けていきます。

 

ネット観測のあと、翌朝にかけては、この航海最後となる大きな観測メニューが実施されました。そのメニューのひとつCTD観測に使われる専用クレーンにトラブルが起きました。幸い、いつも通り乗組員の適切な対応により間もなく復旧しましたが、今回のように終盤に各種機器のトラブルが発生することがときどきあります。最後まで頑張って力尽きた感じです。

折りたたまれ、デッキに佇むCTDクレーン。
撮影:JARE61 茂木正人(2020年2月1日)

海鷹丸は2000年生まれなので、今年で二十歳になります。人間だったらこれからバリバリ働く年齢ですが、船でいうと、もうおばあちゃんです。いろんなところが痛んできます。それを乗組員が日ごろから、経費を節約しつつメンテナンスや修理をし、この航海を支えてくれています。南極観測は、運航面や甲板作業、エンジン周りや賄い、様々な支援を受けて成り立っています。

 

洗われて甲板で干されるカラフルなヘルメットたち。
撮影:JARE61 茂木正人(2020年2月2日)

乗船中の研究者や乗組員の中には、小さい子供を日本に置いてきたお父さんやお母さんが何人もいます。かくいう私もそのひとり。南極航海はいろんな人に支えられています。家族や身近な人に感謝です。

 

JARE61 茂木正人)