1月27日。南緯64度に沿った観測ラインを東に進みます。3~6時間ごとに観測点に着くので、比較的あわただしいです。もうしばらくこの状況が続きます。
生態系研究グループも様々な観測を行っていますが、その一つにサルパの採集を目的としたネット観測があります。サルパは一般の方々にはあまりなじみがないかもしれませんが、南極海ではナンキョクオキアミと同じくらい注目されている生物です。にもかかわらず、その生態についてはナンキョクオキアミほど研究されていません。その原因に、単為生殖により大量発生することがあるが、どちらかというと神出鬼没である、あるいは体がゼラチン質で壊れやすい、ということが挙げられます。つまり、採ろうと思っても計画通りにいかない、採れたと思っても壊れている(すぐ死んでしまう)のです。
オーストラリアを中心としたチームは活きの良い個体を採集し、航海中に飼育実験をもくろんでいますが、実験に使える個体はいまのところ4個体しか採集されていません。航海も終盤に差し掛かっていますが、最後まであきらめずにネットを入れます。
写真はリングネットと呼んでいるネットで極めてシンプルですが、サンプルを受けるネットの一番下の部分は大きめのプラスチック容器になっていて、サンプルが水に漬かったまま上がってくる仕組みです。プランクトンが生きたまま採集できるよう設計されています。
私はこれが11回目の南極航海ですが、残念ながら人間にとってのリゾートは見つけていません。(前回の記事をご参照ください。) でも、この海にわざわざ遠くからやってくる多くの鯨類や海鳥類にとっては、夏のリゾートなのかもしれません。
1月28日午前3時30分、東の空が燃えていました。久しぶりの太陽。晴れ間くらいならこれまでもあったのですが、南極圏に入って「晴れ」は初めてです。気温は0.2度ですが、日なたに出るとぽかぽか感じます。しかも凪いでいます。この日は大きなミッション、係留系の投入作業があったのでよかったです。
(JARE61 茂木)