国際共同研究とトリ活

今回、この船にはオーストラリア、ブラジル、中国、日本の国籍を持つ研究者・大学院生が乗船し、様々な研究テーマで海洋観測を行っています。様々といっても別々に観測を行っているわけではなく、一つのネットで採集されたサンプルを分け合ったり、知識や経験、アイデアをシェアしたりしながらの共同研究・観測です。南極海の研究は、どの国もきわめて大きなコストが掛かります。研究者がいくら希望しても、研究船の利用機会も限られているし、リスクもあり、単独のチームでは南極海の研究は簡単に進むことはありません。そこで、国際的に情報や研究観測の機会を共有するために、連携体制を構築したり、データを共有したりするのが近年主流となっています。

日本の生態系研究グループは、6年ほど前からオーストラリアとの共同研究体制の強化に大きく踏み出しました。その枠組みの中で、海鷹丸は中心的な研究プラットフォームと位置づけられています。

日豪で協力しながら、ネットサンプルの仕分け作業
撮影:JARE61 茂木正人(2020年1月23日)

 

 

海鷹丸でのトリ活は続いています。 

そのトリのことなのですが、今年は少し変なのです。代表的ないくつかの種があまり飛んでいないのです。その種はナンキョクフルマカモメ、ギンフルマカモメ、マダラフルマカモメ、そしてミナミオオフルマカモメです。

ミナミオオフルマカモメ。
撮影:JARE61 茂木正人(2020年1月24日)

例えば写真のミナミオオフルマカモメ。この種は好奇心が強いのか、漁船のおこぼれをもらうことを知っているのか、観測をしていると数十羽が集まってきて、アヒル将軍のように船の周りにぷかぷか浮いている風景は我々にはおなじみです。しかし、今年はせいぜい数羽が浮かんでいる程度。上に挙げたその他の種は、南極圏で繁殖する種で、主にナンキョクオキアミを食べていると考えられています。これら3種は南極海の高緯度海域で優占するはずなのですが、今年はハシボソミズナギドリばかり目立ちます。 

 

科学者がものをいうには、データの解析を待たなくてはなりませんが、直感的な話としてここはご容赦ください。この直感的な異変は、どうも、彼らの餌となるであろうナンキョクオキアミの生息密度とも関係しそうです。今年は、ネット観測でナンキョクオキアミがあまり採集されていません。こちらも過去のデータとの比較やエコーサウンダー(計量魚群探知機)の解析が必要ですが、トリ達はどこか餌の多い場所に行っているのかもしれません。

 

 

JARE61 茂木正人)