今から約30年前、JARE30で日本隊は初めてセール・ロンダーネ山地の生物調査を行いました。その時の生物調査隊員の記録によると「セルロンでコケや地衣類を調査する場合、まず空をよく見てユキドリを探すと良い。ユキドリが下りた岩場にはおおむね巣があり、その周辺にはユキドリのフンによってできた養分の高い場所がつくられている。そこにコケや地衣が繁殖していることがある」とありました。我々もそれにならい、最初の調査地としてユキドリの営巣が確認されているセルロン西部の“雪鳥とりで山”に向かいました。
到着後、そっと岩場を登っていくと…
あ、いた!
さすがに使用中の巣にお邪魔するわけにいきませんので、使っていない古巣を見てみると、確かに地衣やコケがカーペットのように生えていました。
故中西哲教授(神戸大学)がペンギンなどの海鳥の営巣地周辺で地衣がまとまって生える現象を「好鳥糞性地衣類群落」と命名しましたが、まさにこのことでしょう。厳しい南極の環境下では、コケや地衣はいろんなものを資源にしてくらしているのですね。
(JARE61 田留健介)