「ぬるめ池」での調査はぬるくなかった(後編:準備万端!しかし……)

前編:なぜぬるめ池で調査を?の続きです!

<準備万端!しかし……>

キャンプに合流した18日は快晴で、ぬるめチームの隊員らはボートを使った湖底の地形調査を完了させ、その後せっせと湖底掘削の準備に励んでいました。

ボートで湖にでるチームのメンバー。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月8日)

しかし……

9日の朝には強風の予報となり、これから吹雪になるとの情報が。ボートでの調査は危険と判断し、せっかく準備したボートをいったん陸にあげて、物資が飛ばされないよう固定することになりました。調査計画が天候に左右されるのは残念ですが、仕方がありません。

ボートの空気を抜いて、池から陸上に引き上げました。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月9日)
調査用機材や野外物資はネットやベルト、重い石を使って飛ばされないよう固定。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月9日)

<強風の中での調査>

翌10日、昭和基地からの無線通信によると、基地では予報通りの吹雪だったようですが、ぬるめ池周辺では雪は降りませんでした。しかし、強風のため、やはり、ボートを使った掘削調査はできませんでした。

代わりに、ぬるめ池周辺の陸地の堆積物調査をこの日に実施することになりました。

ぬるめ池の東側、沢のような地形のところ。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月10日)
地面には貝の化石が。少し歩いただけですぐに見つける研究者はさすがです。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月10日)

泥の中の白いものが貝の化石。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月10日)


寒風の吹きすさぶ中、ぬるめチームのメンバーは、次々見つかる海洋生物の化石に「楽しくなってきた!」と言いながら調査を進め、ある場所に1メートル近くの深さのトレンチ(穴)を掘りました。

つるはしやスコップでトレンチを掘って堆積物の地層を露出させます。寒くて強い風の中の重労働です。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月10日)
大学院生の佐々木さんが数センチごとに泥のサンプルを採取しました。日本に持ち帰り、含まれる化石などを分析して、地層が堆積した当時の環境を調べます。風が強く、サンプルを入れるポリ袋も気を抜くと吹き飛んでしまいそう。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月10日)

夕食は豚の生姜焼きでした。とてもとてもおいしかったです!
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月10日)

この後、別の場所でもトレンチを掘ってサンプルを採取する予定でしたが、さらに風が強くなり、簡易計測では風速22メートル。調査は中止となりました。翌日までテントの中で待機です。

<天気回復!>

11日の朝には強風がやみ、ボートでの調査ができるほどまで回復しました。再びボートに空気を入れ、湖底掘削の準備をしました。

ボートを使った湖底掘削の準備。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月11日)

残念ながら帰りのヘリの時間がきてしまい、掘削の様子を見ることはできませんでしたが、その日、毎晩20時に行っている無線定時交信で「掘削に成功した」との連絡が入りました!3メートルもの湖底堆積物が採取できたそうです。

研究成果の論文やニュースだけでは、研究サンプルがどのように採取されたのかを読み取ることは難しいですが、現地での取材により自然に左右されるフィールドワークの厳しさや、その中にある楽しさを垣間見た4日間となりました。

JARE61 寺村たから、極地研 広報室)