昭和基地沖の『北の浦』の海氷(凍った海水)の上で、「しらせ」接岸翌日の1月6日から、海氷分布のモニタリング・海氷下の植物プランクトンの調査を目的とした観測を実施中です。
観測チームは、毎朝「しらせ」からスノーモービルで北の浦の観測ポイントへと移動し、そこで2手に分かれます。
海氷モニタリング班は、海氷の上の積雪深を測ったり、スチームドリルで海氷に穴を開けて氷厚を測ったり(多年氷では6m以上!)、電磁誘導式の海氷厚センサーをそりで引いたり、コアラーと呼ばれる筒で海氷に穴を開けてコア(氷の柱)を採取したり、そこで開けた穴から海氷下の海水を採取するなどして、海氷分布とその背景にある物理化学環境を調査します。
また、ヘリコプターから海氷厚センサーを吊るして広域を低空飛行することで、ドリル計測やそりのセンサーではカバーしきれない広範囲で海氷の厚さをマッピングします。
生態系班は、海氷に空いた隙間から小型のネットを投入してプランクトンを採取したり、海氷下に可視光センサーを挿入して海氷が植物の光合成をどれだけ制限するかを調べたりします。
また、海氷コアをただ採取するだけでなく、現場でカットしてから「しらせ」に持ち帰り、観測室に付きっきりで培養・分析することで氷の中に住む微生物の量を調べたり、帰国後に海氷の結晶構造を解析して海氷の成長プロセスを解析したりします。
海氷分布のモニタリングは、南極観測隊で毎年行われてきた観測ですが、生態系観測は61次隊で初めて実施されるものです。海氷がどのように南極海の光環境と周辺の生態系に影響しているかという問題に対して、新しい成果が期待されています。今後は、水中ロボット(ROV)を用いた観測も行い、海氷下の生態系のさらなる理解を目指します。海氷下の植物プランクトンの存在量を、ROV に搭載した光センサーを使って推定するアルゴリズムを開発することが狙いです。
チームを率いる真壁竜介隊員は、「これまで長年続けてきた海氷物理観測と連携して、南極海生態系の理解に向けた新たな展開をつくりたい」と意気込みを語ってくれました。
強風による中断をはさみながらも、観測は順調に進んでおり、1月13日頃まで続けられる見込みです。
(JARE61 山崎開平)