2か月後に会いましょう ~漂流系の投入が無事に終了

東経110度上を真南に進んでいた「しらせ」ですが、昨日、5地点目の海洋生態系モニタリング観測が終了した後は、南東に方向を変えて進んでいます。観測隊はいまどこ? 

今日未明、氷海に進入。起床時間には、しらせの周囲は一面の海氷に覆われていました。

観測隊はいまどこ?のページにしらせ航跡と海氷状況も掲載しましたので、合わせてご覧ください。

午前5時半、船尾から撮影。航跡以外は一面の海氷、遠くには氷山が。気温マイナス2度。
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月9日

午前6時から、海氷下の生態系を観測するための「漂流系」の投入が行われました。

左:投入前の漂流系(撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月9日)
右:漂流系の模式図

海氷縁では海氷が融ける春から夏に植物プランクトンが大増殖します。この大増殖の発生機構や、プランクトン増殖後の海洋環境の変化、海氷の下にたくさん付着している藻類の行方などを調べることが、この「漂流系」の目的です。沈降するプランクトンを採取する「セジメントトラップ」や、海水の塩分、温度などを計測するセンサーが付いたブイを海に浮かべ、なんと2か月もの間、漂流させたまま観測を続けます。

 

全長150メートル、センサー4つ、セジメントトラップ2つ、そして流速計が備え付けられた、とても大がかりな装置のため、力強いしらせ乗組員の皆さんの手によっても、投入には約1時間かかりました。

下のほうの装置から順番に投入
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月9日
GPSのついたブイの部分はクレーンを使います
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月9日
投下後、流されていく漂流系。無事に回収できますように!
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月9日

来年2月中旬、ブイについたGPSにより位置を把握し、しらせ復路での回収を予定しています。

 

実は、漂流系を用いた観測の試みは58次隊、59次隊でもありましたが、いずれも観測の遂行はかないませんでした。59次隊では、予想以上の厳しい海洋環境にGPSブイの部分が破損してしまったため、今回はブイのフレームを大幅に強化した改良版を持ち込みました。

 

この観測を計画・実施する真壁竜介(まかべ りょうすけ)隊員は、「良い条件のところに入れることができてホッとしています。あとは無事を願うばかりです」と語りました。2月の回収が楽しみです。

ユキドリ。緯度が高くなるほど鳥をよく見かけるようになりました。
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月9日

JARE61 寺村たから