海の長期変化を見る

採水器付CTD(Conductivity, Temperature, Depth)測器の投下
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月4日

南南西に進んでいた「しらせ」は真南に進路を変えました。ここからは、東経110度ラインをまっすぐ南に進みます。

観測隊はいまどこ?

昨日(4日)、しらせの船尾側にある観測甲板で、“海洋生態系モニタリング”の観測が始まりました。これは、毎年同じ地点で海水やプランクトンの採取を行い、海の生態系の長期変動を調査するものです。

61次隊でもポイントを移動しつつ、往路、復路それぞれ5日連続で観測を行います。

海洋生態系モニタリングの観測地点

4日はL1地点に、5日はL2地点に1時間半ほど船を停めて、海水やプランクトンの採取を行いました。

まずは、海水の塩分や温度を連続的に測定できるCTD測器に採水器が付いた「採水器付CTD測器」を水深450メートルまで沈め、引き上げます。採水器は特定の水圧を検知するとボトル上下の蓋が閉じるようになっていて、6段階の深さ(今回は水深205075100200400メートルに設定)の海水をそれぞれ4リットル採取することができます。

採水器付CTD測器

採水器付CTD測器の引き上げ
観測機器の投下と引き上げは、しらせ乗組員が実施します
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月4日

続いて、プランクトンを採取するノルパックネットの投下。円錐形の網を水深150mまで沈めて引き上げました。

ノルパックネットの投下
5日は、前日とはうってかわって曇天となりました。緯度も高くなり寒い
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月5日

しらせ乗組員がノルパックネットの投下・引き上げをしている間、観測隊員は採水器で採った海水を、観察項目ごとに慎重に小分けにしました。

装置の 引き上げ後、迅速かつ丁寧に海水をポリ瓶やスピッツ管に移し替えます
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月4日
採水器のボトルに書かれた移し替えの指示
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月4日


ノルパックネットが引き上げられたら、採取物を瓶に詰めて保存します。

ノルパックネットの引き上げ
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月5日
ノルパックネットの採取物を保存用のボトルに移し替えます
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月4日

ノルパックネットの採取物
動物プランクトンが沈んでいます
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月5日

一連の投下・引き上げが終わった後も、分析は続きます。

採水器で採った海水を使い、植物プランクトン量の指標となるクロロフィルaの濃度を測定します。

クロロフィルaの濃度測定のためのろ過作業
撮影:JARE61 寺村たから、2019年12月4日



海洋生態系モニタリング観測は、往路ではあと3日(L3L4L5地点)続きます。

担当する渡部 陽(わたなべ あきら)隊員は、「多忙ではあるが、予定していた観測項目はすべて実施できている」と引き締まった表情で語りました。

JARE61 寺村たから)