【2019.1.21】海鳥の研究(海鷹丸)

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海鷹丸から見える氷山と暗い空

 

この航海は、どちらかというと天候に恵まれませんでした。まず、晴れた日が少なく、太陽をあまり見ていません。積もるほどではありませんでしたが、南の方では雪が毎日のように降りました。晴れたらすばらしい景色のなかで観測ができたはずで、初めて南極に来た皆さんには、ちょっと残念でした。ぜひ、また来てください。

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ナンキョクフルマカモメ:南極海で最もよく見る海鳥のひとつ。主にイカ類、甲殻類、小魚を食べる。

 

ブリッジに上がると海鳥の姿がよく見えます。我々の研究チームはこの海鳥もターゲットにしています。

  

研究対象の海域では、ナンキョクフルマカモメ、マダラフルマカモメ、ギンフルマカモメ、ミナミオオフルマカモメ、ハシボソミズナギドリなどが個体数で優占する種です。

彼らの個体数・生物量は膨大と考えられますが、生態系や食物網おける位置・役割については不明な点が多く、南大洋の食物網を描いた図に含まれないことさえあります。

  

食性についても多くの種では断片的な知見しかありません。近年は保護の観点から、捕獲して胃内容物を吐かせるなどの方法を用いた研究がやり難くなったことも要因と思われます。

  

一方、我々の研究対象となっている比較的狭い海域の中で、一定の分布パターンがあることが分かってきました。

例えば、上述の海鳥のなかではハシボソミズナギドリを除くすべての種が、大陸棚縁辺部から大陸棚斜面のナンキョクオキアミが優占する海域に分布します。一方、ハシボソミズナギドリは、主にその海域よりも外側(北側)、南極周極流南限前線付近(南緯60度くらい海洋前線)まで分布しています。こちらの海域には、ナンキョクオキアミと異なる種類のオキアミ類やカイアシ類が優占します。このことから、ハシボソとそれ以外の海鳥では、餌生物に対する指向性が異なること、少なくともある程度別の食物網に関与していることなどが示唆されます。

  

南極では、海鳥類にペンギン類も含まれます。しかし、ペンギンは飛ばないので、飛ぶ鳥とくらべるとその行動範囲は大きく制限されます。

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1月15日に撮影されたミナミオオフルマカモメ

 

ここは当然かわいいペンギンの写真が来る!と期待されるところですが、今年は悪天候のせいかわずかにアデリーペンギンが現れたのみでした。写真は1月15日撮影のミナミオオフルマカモメ。停船観測中にこうして集まってくるので、ちょっとかわいいかも。

ときに30羽くらい集合することも。翼を広げると2 mくらい。飛ぶと迫力があります。手前は白色型個体。主にイカ類、甲殻類、魚類を食べているらしいですが、ペンギンやアザラシの死体をつついたり、ときには弱った海鳥を襲ったりすることもあります。

  

  

海鷹丸の動きについては以下からご覧ください。

⇨「野外調査隊はどこ? 海鷹丸による海洋観測