【2019.1.12】最も重要なミッションのひとつを実施!(海鷹丸)

 

12日未明2時就寝、朝5時起床。風は4.2 m/s。うねりはあるものの、べた凪(風が全くなく海面に波がない)といってよいでしょう。悪天候のため前日にスキップした観測点に戻ってきました。ここでは、この航海で最も重要なミッションのひとつ、係留系の設置がありました。係留系は、全長4000 m近い長さのロープの途中に、各種センサーや、沈降粒子を時系列で捕捉する装置(セジメントトラップ)などを取り付けたものです。これを、船をゆっくり走らせながら海面に流していきます。すべて流し終わったら、ロープの最後に取り付けた500 kgのアンカーを、目標地点で海中に投下します。先端や途中にフロート(浮き)が付いているので、アンカーが海底に到達すると一本のロープが海底から立ち上がったように設置されます。係留系の各種センサーやセジメントトラップはバッテリーで稼動し、自動で1年間データや沈降粒子サンプルを取り続けてくれます。そして、来年の同じ頃に海鷹丸で回収する計画です。

20190112

係留系の投入開始。一番上のフロートが入ったところ。三角コーンがさかさまになったものがセジメントトラップ。上から落ちてくる沈降粒子(マリンスノー)を捉える。

 

南極の海はその大部分が冬季に海氷で覆われます。氷に覆われた海は砕氷船でもアクセスは容易でなく研究がなかなか進みません。そのため、冬季の海氷下の生態系はブラックボックスとなっています。南極海の生態系を特徴付けているのはこの海氷といって間違いではありませんが、この海氷自体が観測を妨げているというのは皮肉です。我々は冬の南極海について何も知らないといっても過言ではないのです。

  

このブラックボックスを開ける鍵となるのが、係留系です。一年を通した沈降粒子の組成や量の変動などから海氷下の生物活性(生物生産)の季節変化が垣間見られるはずです。係留系をこの航海では5系設置する予定で、1年後の回収に成功すれば、ブラックボックスの中がチラッとみえるでしょう。

  

海鷹丸の動きについては以下からご覧ください。

⇨「野外調査隊はどこ? 海鷹丸による海洋観測