南極の大気を見つめる

昭和基地では、地球環境の変化を捉えるため、大気中に含まれる二酸化炭素(CO₂)、メタン(CH₄)、一酸化炭素(CO)、一酸化二窒素(N₂O)、酸素(O₂)の5種類の微量気体成分を連続観測しています。オングル海峡に面した屋外のタワーから外気を取り込み、各成分に応じた観測装置で分析することで、大気中の濃度の変化を記録しています。

分析室に設置された観測装置(左)、外気の取込口は屋外のタワー上部に設置(右)
撮影:JARE67 矢萩智裕(2026年10月19日)

これらの観測装置が正常に動いているかを、モニタリング観測担当隊員が毎日チェックしています。また、装置で使用するフィルタや大気中の水蒸気を除去するためのガラストラップ、分析の際に使用する標準濃度ガスのボンベなどの交換を定期的に行っています。トラブルが発生した際には、原因を調べ、解決にあたります。国内の研究者からサポートはあるものの、現地で実際に作業する際には大きな責任とプレッシャーも感じます。こうした日々の地道な作業が、途切れることのない観測を支えています。

観測装置の日次点検(左)、分析用のガスボンベ交換(右)
撮影:JARE67 西野沙織(2026年10月14日)

観測装置が設置されているのは「観測棟」と呼ばれる建物です。今から約60年前(1967年)、第8次南極地域観測隊によって建設されたこの建屋は、現在も使われている昭和基地の歴史ある観測施設の一つとなっています。観測棟での大気微量気体の観測は、約40年前にCO2の濃度観測からスタートしましたが、過去にはここでオーロラや地磁気の観測も実施されていました。その名の通り、歴代の隊員が積み上げてきた様々な観測の歴史が刻まれた場所でもあります。

夏季(左)及び冬季(右)の観測棟。夏期間にはアデリーペンギンが遊びにきてくれました。
撮影:JARE67 矢萩智裕(2026年1月26日)(左)、JARE67 矢萩智裕(2026年9月13日)(右)

南極は、人間活動や植物の影響がほとんどなく、地球規模の大気環境の変化を捉えるうえでも重要な観測地点です。長期にわたってデータを蓄積することで、地球規模の気候変動や大気環境の変化を理解する手がかりとなります。目には見えない大気の変化を、日々の観測を通じて記録していく。先人たちが積み重ねてきた観測のバトンを、途切れることなく未来へつないでいきたいと思います。

南極・昭和基地(青)および北極・ニーオルスン(赤)で観測された大気中CO2の変動
図:国立極地研究所および東北大学

(JARE67 矢萩智裕)