すでに「しらせ」はフリーマントル港を出港しましたが、寄港中、機器を持って岸壁で作業を行なう地圏モニタリング担当隊員の姿がありました。航行が始まる前に実施している船上重力計の観測準備のためです。
船上重力計を持って船を降りる岡田隊員。5kgほどで手持ちサイズの機材。
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月6日)
南極観測船「しらせ」では、大気や海水、波の高さなど多種多様な観測を行っていますが、そのうちの一つに重力の観測があります。地球の重力(正確には重力加速度)は9.8m/s2だと理科で習ったことがあるかもしれませんが、実際には緯度や標高、海の上では海底地形の様子などによって、小数点以下の値が微妙に異なっています。そのため「しらせ」では正確な地下構造を知るため、航路上の重力値を連続的に観測しています。
撮影:JARE67 池田未歩(2025年10月9日)
正確なデータを取得するために必要なのが、岡田隊員の実施していたフリーマントル岸壁での重力計測です。しらせで計測することができるのは相対重力(任意の点との差を知る方法)なので、時間経過により生じるズレを修正するため、入出港時にこのような作業を実施しています。
作業の流れとしては、①岸壁で相対重力計(手持ちタイプ)による重力計測 → ②基準点(過去に絶対重力を測ったことのある点)での重力計測 → ③岸壁でもう一度計測 の3行程です。
この話を聞いた時、基準点はどのような場所にあるのだろうかとあれこれ想像していたのですが、建物の柱のさらにその裏...という偶然出会うことは難しい場所にひっそりと設置されていました。
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月6日)
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月6日)
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月6日)
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月6日)
重力計自体の水平方向の向きを揃えることも重要。特殊な三脚を使い、繊細な操作で水平方向に揃えます。
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月6日)
このようにして取得されたデータが、船上の観測結果の補正に用いられています。この日で予定していた内容は全て実施することができたとのこと。岡田隊員、おつかれさまでした!
(JARE67 池田未歩)


