南極で一票を投じる「南極投票」

7月11日、南極の昭和基地で第27回参議院議員選挙の投票が行われました。「南極投票」という制度で、日本国内の投票日よりも少し早く実施されました。

投票の流れは、まず隊員は隊長室に設置された投票用紙交付場所に行きます。「南極選挙人証」(後述)と、FAXによる投票に用いる「投票送信用紙」(選挙区・比例代表各1枚ずつ)に、藤田隊長が必要事項を記入します。隊員は「投票送信用紙」を受け取り、投票の流れ(FAX送付や封入等)を立会人である庶務隊員から聞き、通信室に設置された投票所に向かいます。隊員は「投票送信用紙」に記入、自らFAXで1枚ずつ選挙管理委員会に送信します。そして「投票送信用紙」をハサミでカットし、投票部分を封筒の中に、自分の氏名などを書いた部分を封筒の表面に貼り付け、封を閉じます。封筒を隊長に提出して、投票は終了となります。

隊長室に投票用紙交付場所、通信室に投票所を設置
撮影:JARE66 米村幸司(2025年7月11日)
投票用紙に記入する隊員
 撮影:JARE66 米村幸司(2025年7月11日)
確認しながらFAXの送信や封筒への封入も隊員自ら行います
撮影:JARE66 米村幸司(2025年7月4日)

準備は隊員が国内にいる約1年程前から始まりました。各隊員が選挙人名簿に登録されている市町村の選挙管理委員会にて「南極選挙人証」を請求、それをとりまとめて指定された選挙管理委員会(今回の場合、東京都の港区選挙管理委員会)にて「投票送信用紙」を請求しておりました。越冬隊員は一度南極に来ると、後から取りに戻ってくることはできません。港区選挙管理委員会の方には事前の相談や確認、交付手続き等で大変お世話になりました。また各市町村の選挙管理委員会の方にもこの「南極選挙」そのものが珍しい手続きであるので、確認や交付手続きについて対応いただいたことに感謝したいと思います。この日無事に全員分の投票が完了し、安堵いたしました。投票を終えた隊員に感想等を聞いてみました。

Q なぜ南極選挙の手続きをしようと思いましたか?
・毎回選挙には必ず行っており、南極でも選挙権が行使できるのであればぜひやりたいと思ったため。
・南極で投票するという貴重な経験ができると思ったから。等

Q.新鮮に感じたことや国内での投票との違いは?
・昭和基地ならではの投票方法を目の当たりに実感し、投票できた事に投票権を感じた。
・FAXを使い投票が行われ自分の一票がカウントされることになるありがたさに感謝した。
・候補者の情報は自分で調べて、投票は自分でFAXするというところが、自らの意思を持って一票を投じることの重さを知った。帰国後もこの気持ちを忘れず投票したいと思います。

藤田越冬隊長は今回3回目の南極投票です。「国政選挙は年に一度あるかないかで、隊次間で引継ぎなどはされているが、運営側は毎回初めてのことなので手作り感がある。国内でも毎度投票しており、南極でも当然投票したいと思った。また、市町村の選挙管理委員会でも南極投票の制度が知られてなかったり、観測隊自体も知られていなかったりするので、少しでも多くの方に知ってもらうためにも投票した。」と話していました。多くの隊員がインターネットを通じて選挙管理委員会のサイトや報道機関のニュースなどから情報を得ていました。また手続きが大変だからこそ各々が持つ1票の重さを感じていました。

順番に一人ずつ投票の手続きを行いました
撮影:JARE66 米村幸司(2025年7月11日)

(JARE66 米村幸司)