ペンギンセンサス

ペンギンセンサスとは、アデリーペンギンの個体数や営巣数を毎年、同じ時期に調査することを言います。

アデリーペンギンの個体数は11月10~20日に最大数に達し、11月10日~30日に産卵が行われます。この調査は第5次隊から行われている長期的な調査で、南極地域観測隊の重要なモニタリング観測の一つです。

海氷上を歩きルッカリーへ戻ろうとするアデリーペンギン
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年11月16日)

ペンギンやアザラシなどの動物が集団で子育てする場所やその集団のことをルッカリーと言い、多いところでは数千羽ほどのペンギンが生息するルッカリーもあります。

昭和基地周辺でルッカリーが作られる場所は毎年決まっており、複数地点に赴いて個体数調査を実施します。今回のペンギンセンサスでは、昭和基地からスノーモービルで30kmほど移動した場所に位置するラングホブデという露岩域に調査に出かけました。

ペンギンのルッカリー。小さな黒の粒々がペンギンです。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年11月16日)

海氷からルッカリーに向かうにつれ、遠目に黒の点々が見え始めました。この群れは全てペンギンなのかと圧倒されます。観察していると、トウゾクカモメに卵を狙われてそれを阻止しようと戦っているペンギンがいました。また、石を集めて作った巣を別のペンギンがその石を狙って近づいたり、そのペンギンを追い払ったりと、自然界で生活を営む野生ペンギンの生態がそこにはありました。

カウンターを片手に、個体数をカウントする
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年11月16日)

11月中旬に実施する個体数調査では、3人以上で個体数を3回カウントし、その平均を取ることで、なるべく正確な値を集計します。あまりのペンギンの数に圧倒され、最初はしっかり個体を数えられるか心配になりました。動いていたり重なっていたり、別の所から帰ってきたり出て行ったりと、1つのルッカリーで個体数を数えるのも一苦労でした。ペンギンを驚かせないように適切な距離を保ち、数を数えます。

海氷上からルッカリーへと戻るアデリーペンギン
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年11月16日)

12月上旬には、営巣数の調査を行いました。11月中旬の個体数調査とは異なり、うつ伏せに寝そべったり巣に立った状態で卵を温めているペンギンのいる巣の数をカウントします。これも個体数調査と同様、かなり膨大な数で、複数人で複数回カウントし、できるだけ正確な値を集計します。

親鳥が腹ばいになり、卵を抱えている
撮影:JARE65 寺﨑康展(2024年12月4日)
ペンギンセンサスの野外活動中に遭遇したアザラシ
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年11月16日)

昭和基地での基地生活が長くなると、ここが南極であることをふと忘れそうになってしまいます。しかしこうして昭和基地を離れ、ペンギンやアザラシといった「南極」と聞いてイメージする動物を実際に目の当たりにして改めて自分は南極にいると実感し、圧倒されました。これから繁殖時期を迎えるアデリーペンギンたち。夏期間の昭和基地にも、遊びに来てくださいね。

(JARE65 山岡麻奈美)