64次隊には2名の調理隊員がいて、朝昼晩、隊員たちに温かい食事を作ってくれます。曜日感覚を忘れないための慣習である毎週金曜日のカレーライス、イベントに登場するコース料理など、特別な料理はこれまでも紹介してきましたが、ふつうの日の食事は取り上げることが少なかったように思い、今回、平日の食事と調理隊員の仕事ぶりを取材しました。
調理隊員の仕事は、3食の食事づくりだけではありません。翌日以降に使用する食材の解凍や食糧庫の整理、野外観測調査に出かける隊員や夜勤者へのお弁当作り、今年11月出発予定の内陸調査旅行チームのための行動食作りなど多岐に渡り、いつも重いもの、冷たいもの、大きいものと格闘しています。
越冬隊員1人が昭和基地で1年間に消費する食糧は約1tになります。昭和基地への補給は南極観測船「しらせ」による年1回に限られるため、不測の事態に備えた予備の食糧や今年11月に昭和基地入りする65次先遣隊分の食糧まで、たくさんの食材を持ち込んでいます。
屋外での作業から冷えて戻ってきたとき、温かな料理が迎えてくれるのは本当にありがたいです。二人の調理隊員は、いつも主菜、複数の副菜、スープまで豊かな食事で隊員たちを満足させてくれます。長谷川隊員に、普段どんな想いで調理の仕事に臨んでいるか話を聞きました。
「単調になりがちな越冬生活のなか、隊員みんなの会話のきっかけになるような料理を届けられたらと思っています。毎年7月頃になると生鮮品の在庫は底をつき、食材はすべて冷凍品に切り替わる時期。限られた食材でできる限りの献立で作っていく考えでいますが、その時々で生活係が水耕栽培室で収穫した葉物野菜を提供してくれるなど、調理隊員を支えてくれる人がいることは本当にありがたいです。毎日のことなので、手の込んだものはなかなか作れないですが、28人の越冬隊員のうち誰かのストライクゾーンに入るような料理が出せたらと思って作っています。」
長谷川隊員の想いを聞き、隊員みんなで食卓を囲む時間を楽しんでいきたいと改めて思いました。
(JARE64 白野亜実)