昭和基地の環境を守る

私たち観測隊は、観測と設備の維持管理を行いながら、昭和基地で生活をしています。それに伴い、設営作業時の廃材や故障した観測機器、生活ゴミなどの廃棄物と生活排水が発生します。今回は、廃棄物や生活排水の処理など、環境保全を担当する隊員の仕事について紹介します。

昭和基地では、廃棄物はすべて日本へ持ち帰っています。例えば、可燃ゴミは焼却炉で燃やして灰に、生ゴミは炭化装置で炭にして容量を減らしてから持ち帰ります。ゴミがたまったら、いつでも焼却炉を稼働できるわけではなく、焼却炉から出る煙が基地での大気観測などに影響を与えないよう、風向・風速など一定の条件をクリアする場合にのみ焼却処理を行うといった配慮をしています。

焼却炉で可燃ゴミの焼却処理の準備を進める環境保全担当の塩原隊員
撮影:JARE64 白野亜実(2023年4月26日)

また昭和基地には、日本の排水基準を満たした能力の高い汚水処理装置があります。この装置により、入浴やお手洗い、厨房、洗濯などによって出る生活排水を一括で処理し、浄化して海に流しています。環境保全担当の隊員は、排水量が多くて処理が追い付いていないことがないか、処理後の水が十分に浄化されているかなど、いつも状況をチェックしています。さらに、この汚水処理装置は微生物に分解させる生物処理の方法を取っているので、微生物が効率良く処理できる条件を維持するように努めています。

汚水処理装置で処理水の状況をチェックする
撮影:JARE64 白野亜実(2023年5月27日)

国際的な取り組みとして、環境保護に関する南極条約議定書が1991年に採択されています。日本ではこれを担保するべく1997年に南極地域の環境の保護に関する法律が制定されました。南極地域での活動は、南極の環境及び生態系に対する著しい影響を回避し、またこれらへの影響を最小限とするように計画及び実施することが原則です。私たち観測隊は、観測や設営作業、生活などあらゆる活動について環境大臣の確認を得たうえで、南極にやってきています。

汚水配管に異常がないか確認しながら架台の上を歩く
撮影:JARE64 白野亜実(2023年4月19日)

環境保全担当の塩原隊員に日頃どんな思いで仕事に取り組んでいるか伺ったところ、「観測隊ではゴミの分別が30種類以上に渡って細かく設定されていますが、隊員みなが徹底して分別しています。日本で暮らすより煩雑な分別ですが、環境に気を配って対応してくれていてありがたいです。」と話してくれました。

今日5月30日は、語呂合わせで「ゴミゼロの日」ですね。観測隊には、昭和基地の廃棄物や生活排水と向き合い、環境を守りながら観測隊の活動を支えている隊員がいることを知っていただければ嬉しいです。

(JARE64 白野亜実)