レスキュー総合訓練

観測隊は昭和基地だけでなく、南極大陸まで野外観測や作業に出かけることがあります。ひとたび野外に出ると海氷の割れ目(クラック)、氷河の割れ目(クレバス)など、多くの危険が潜んでいるため、隊員は海氷安全講習などの研修を受け、安全第一で野外行動に出ています。事故のないよう十分に対策を取って行動することが大前提ですが、万一事故が起こった場合、昭和基地にいる隊員だけで協力し、レスキュー活動を行う必要があります。そのため観測隊では、本部、レスキュー隊員からなるレスキュー体制を整えています。

64次隊では、4月上旬から野外観測支援担当の久保木隊員が講師となり、レスキュー隊員含め隊全体に、ロープワークや救助法、搬送法等のレスキュー訓練を行ってきました。そして今回、野外行動中にひとりの隊員が崖から滑落したことを想定し、レスキュー総合訓練を行いました。現場の隊員から事故の一報とレスキュー要請を受け、昭和基地の本部がレスキュー体制を発動、車両や装備を整えてレスキュー隊と医療隊員が現場へ急行、隊員の安全を確保しながら要救助者を崖から引き上げて雪上車に収容、医務室に搬送するまで一連の活動を実践しました。これまでの訓練の成果で、無事に救助することができたものの、寒さが厳しく強風の環境では細かに要救助者の容態を把握するのが難しいなど、気づきもありました。

崖から転落した現場を想定した現場 要救助者の容態を確認する隊員たち
撮影:JARE64 中川 潤(2023年4月19日)
レスキュー要請を受けて本部でレスキュー体制の発動を判断
撮影:JARE64 中川 潤(2023年4月19日)
スノーモービルに連結したソリにレスキュー用装備を積み込む
撮影:JARE64 中川 潤(2023年4月19日)

雪面に構築した支点に固定したロープを利用して、要救助者を収容するストレッチャーを降ろす
撮影:JARE64 中川 潤(2023年4月19日)
要救助者をストレッチャーに乗せ、ロープで引き上げる
撮影:JARE64 中川 潤(2023年4月19日)

雪上車に要救助者を収容し、昭和基地まで搬送
撮影:JARE64 中川 潤(2023年4月19日)

要救助者を医務室に収容、治療開始
撮影:JARE64 中川 潤(2023年4月19日)

レスキュー班のリーダーを務めた熊倉隊員は今回の訓練を終えて、「これまでの講習や訓練の成果で、レスキュー隊の立ち上げや必要な装備の積込みはスムーズにいきました。現場の状況把握やレスキュー隊員への指示出しに改善の余地があると思うので、検討を続けていきたいです。」と話しました。

(JARE64 白野亜実)