オーロラから宇宙環境変動を探る

228日深夜、昭和基地では美しいオーロラを見ることができました。肉眼でもはっきりと動きを見ることができ、緑の帯が赤く変化したり、天空から降りてくるカーテンのようにゆらゆら揺れたり、神秘的な現象に歓声を上げて楽しむ隊員たちの姿がありました。オーロラは宇宙空間にあるプラズマが地球の極域大気に衝突して発光する現象であることが知られていますが、今回どのような仕組みで美しいオーロラを見ることができたのか、宙空圏の研究者である田中隊員に話を聞きました。

まず、225530分と26日4時44分(日本時間)に発生した太陽フレア※1により放出されたプラズマのかたまりが地球に到達し、227日4時23日本時間に磁気嵐※2が発生しました。その磁気嵐が続いていた28日深夜、ちょうど昭和基地で晴天であったためにオーロラを見ることができたそうです。田中隊員によると、磁気嵐中に起こったかなり活発なオーロラだったとのことです。

昭和基地の上空に現れたオーロラ
撮影:JARE64 白野亜実(2023年2月28日)

観測隊では、基本観測のうちモニタリング観測のひとつとして、オーロラの光学観測を行っています。今回のオーロラも、これら光学観測のカメラでデータを得ることができました。

昭和基地の光学観測カメラでとらえた2月28日のオーロラの姿

さらに、64次隊では重点研究観測課題「極冠域※3から探る宇宙環境変動と地球大気への影響」として、オーロラを様々な波長で観測できる新型のカメラを導入し、試験運用を開始しています。外国基地との共同研究を通じて、今後、南極の極冠域にこの新型カメラを多点展開することで、これまで以上にオーロラの動きを広範囲に捉えることができるようになると期待されています。将来的には、オーロラ現象の全体像の把握やメカニズムの解明、宇宙天気予報への貢献を目指しています。

試験運用を始めたオーロラを多波長で観測できる新型カメラ
撮影:JARE64 田中良昌(2023年1月22日)

南極の夜空を象徴する存在としてよくオーロラは取り上げられますが、観測隊が昭和基地でどのように観測を行っているか改めてご紹介しました。これから始まる冬の期間、長い長い夜がやってきますが、晴れた夜にはできるだけ外に出て、オーロラや星を眺め、また皆さんにお届けしたいと思います。

1太陽フレア…太陽面で起こる爆発現象
2磁気嵐…地球の磁場が急激に乱れる現象
3極冠域…オーロラ帯よりも高緯度の領域

JARE64 白野亜実)