雲の直接観測

身近な存在である雲は、気候変化を調べる上でとても重要な研究対象です。雲によってもたらされる降雪は、南極域における氷床や海氷の成長を左右する一方で、雲によって増減する太陽や大気からの放射熱は雪氷面の融解に大きく関わります。また、雲の有無・性質によって南極大陸を取り囲む南大洋の海面水温は変化し、その影響が大気・海洋循環にも及ぶと言われています。64次隊では南極観測船「しらせ」で基礎気象要素の観測と雲生成に関連する大気中の塵(エアロゾル)の採取を行なっています。さらに、雲や大気の鉛直構造を把握するためのリモートセンシング機器、雲粒の数や大きさの鉛直分布を観測できる特殊なラジオゾンデ(無線機と気象観測機器がついた気球)、エアロゾル濃度の鉛直分布を計測するドローンなどを使用して南極域の雲の実態把握を行っています。これらの観測によって気候予測モデルの高精度化に役立つデータが取得されます。

様々な船上の測器の一例(左上:総合気象観測装置・放射計・エアロゾルカウンター、右上:エアロゾル粒子の採取装置、左下:気温や水蒸気の鉛直分布を計測するマイクロ波放射計、右下:雲の高さを計測するシーロメーター)
撮影:JARE64 猪上淳(2022年12月25日〜12月30日)
航行中の「しらせ」船上で雲粒子を測定するラジオゾンデを放球する様子
撮影:JARE64 白野亜実(2022年12月6日)
昭和基地接岸中の「しらせ」甲板でドローンを使用した観測
撮影: JARE64 山口真一(2022年12月31日)

ドローンで撮影した高度1000m付近からの風景(雲の隙間から海氷、氷床、しらせの航跡が見える)
撮影:JARE64 佐藤和敏(2022年12月27日)

(JARE64 猪上淳)