昭和基地では、概ね月1回の頻度で「地磁気絶対観測」を行っています。
地球には「地磁気」と呼ばれる地球が持つ固有の磁場があります。方位磁針が北(磁北)や南(磁南)を指すのもこの地磁気があるためです。地磁気の主な発生原因は、地球内部の核(外核)にある液状の鉄などの金属が地球の自転の影響で対流を起こすことによって生じる電流だと考えられていますが、地球内部の対流運動のほかにも太陽など地球外からの影響も受けて地磁気は絶えず変動しています。
地磁気の観測には、連続的に地磁気の変化量を測定する変化観測と、地磁気の向きと大きさを観測する絶対観測の2種類があります。変化観測は、磁力計という磁場の強さを測る測器を用いて自動測定しますが、磁力計の温度変化や設置場所の地盤の傾斜等による変動もあるため、正確な地磁気変化を知るためには、定期的に絶対観測を実施して変化観測値を校正する必要があります。
絶対観測は、太陽活動が落ち着いていて地磁気が静穏で、また、風の弱い日を選び、磁気儀と呼ばれる地磁気の方向を測定する機械を用いて手動で行います。磁気儀が設置された地磁気変化計室は、1966年に7次隊によって建設されたレトロな建物です。
観測に影響が出ないよう、地磁気変化計室の半径50m以内にはなるべく立入らないように普段から注意喚起されていますが、絶対観測中は半径100m以内への立入りや重機・車両の通行が禁止されます。また、腕時計やベルトのバックルなどの金属類をはじめ、カメラや無線機なども地磁気変化計室へ持ち込むことはできません。暖房器具もない地磁気変化計室の室内は厳冬期にはマイナス20℃を下回る寒さとなります。このような厳しい作業環境の下で宙空部門の隊員が1回2~3時間に及ぶ観測を行っています。
南極域での地磁気観測点は限られており、特に絶対観測を行っている観測点は少ないため、1966年(7次隊)以来、地磁気絶対観測を継続して行っている昭和基地は重要な観測点のひとつとなっています。
(JARE63 馬場健太郎)