9月1日から11日まで、雪上車2台で内陸のH128という地点まで観測旅行に行ってきました。H128は昭和基地からドームふじ基地に向かうルートを約100km進んだところにあり、雪上車で昭和基地から1日半、内陸旅行の拠点S16から1日走った場所にあります。
この旅行では、AP0933「東南極の大気・氷床表面に現れる温暖化の影響の検出とメカニズムの解明」とAMP0903「南極氷床の質量収支モニタリング」の一環として、大気中の放射性同位体のサンプリング観測、ゾンデ観測、雲の観測やAWS(自動気象観測装置)のメンテナンスなどを行いました。南極氷床は降雪による氷の増加と融解や海への流出による氷の減少とのバランスによってその増減が決まりますが、降雪のメカニズムや温暖化が東南極の氷床に対して与える影響について明らかにすることなどを目的としています。
2台の雪上車のうち1台にはあらかじめいくつかの測器を設置し、移動の途中も大気のサンプリング観測を実施しました。道中ではこのほか、雪尺観測や積雪サンプリングも行いました。
内陸旅行では、寝泊まりや食事を雪上車の中で行います。今回は63次隊で持ち込んだ新型雪上車SM200を初めて旅行に使いました。SM200の中は従来の大型雪上車SM100型に比べてもさらに広く、参加メンバー7人が余裕を持って食事をすることができ、とても快適でした。この旅行では、SM200に重い橇を引かせて走行性能や燃費を調べ、10月以降に行われるドームふじまでの遠征の参考にするための試験も行いました。
H128には、地点の目印になる赤旗と、そこから500mほど離れたところにAWSがあるだけで、360度全てが雪原でした。夜にはオーロラも出現したほか、滞在中にはマイナス39.5度の気温を観測しました。常にカタバ風が吹き続け、とても寒く、南極大陸を実感した観測旅行になりました。
取得したデータは国内に持ち帰り、解析を行う予定です。
(JARE63 岩本勉之)