昭和基地では、オーロラや地震など様々な観測が行われていますが、気象要素を測定するセンサーを取り付けた「ラジオゾンデ」を気球で飛ばす高層気象観測やオゾン層の量を測定するオゾン全量観測といった気象観測が気象隊員によって行われています。今回はその中から「地上気象観測」を紹介します。
地上気象観測は、気圧、気温、湿度、風向・風速、全天日射量、積雪など観測機器による観測と、見通しを表す「視程」や雲の観測といった人の目による観測を行っており、観測隊の行動の参考にもなっています。 観測結果は、1日8回3時間ごとに衛星回線を通じて世界中の気象センターへ送られて、天気図作成やスーパーコンピュータによる数値計算の初期値などに活用されています。もちろんオーロラが揺らめく夜間やふぶきが吹き荒れる中でも3時間ごとの観測と通報は気象隊員によって欠かさず行われています。そのため、気象隊員は当番を組んで24時間365日交代しながら観測を行っています。
では、ここで問題です。気象庁が管理をしている気象観測施設の中で、唯一ここ昭和基地に置かれている物は何でしょう?
答えは「百葉箱」です。
南極の雪は粒が非常に小さいため、気温計と湿度計が入った通風筒に雪が詰まってしまいます。そのため百葉箱の中に気温計と湿度計を設置しているのですが、ブリザード後の百葉箱の中は、写真のように雪が吹き込んでしまい観測に支障をきたしてしまいます。そのため、ブリザードの後は隊員が点検または除雪をして、観測に影響がないようにしています。
その他の観測機器も正確な観測を行うために毎日のデータチェックや数か月に1回の観測機器の点検、また1年に1回は百葉箱を白いペンキで塗りなおすなどの作業を行い、データの品質を担保しています。
(JARE63 佐藤幸隆)