3月15日、昭和基地の北に面する北の浦の海氷上で海氷安全講習を行いました。
昭和基地は南極大陸から約4km離れた東オングル島にあり、「しらせ」が基地沖に接岸している(または近海にいる)夏の期間であれば、「しらせ」に搭載されているヘリコプターを利用して島の外へ出て観測や設営作業をすることができますが、冬期は雪上車やスノーモービルを利用して海氷上を移動することになります。
昭和基地周辺には、潮の満ち引きによって海面が上下し、その上に浮いている海氷も絶えず上下動することによって生じた「タイドクラック」と呼ばれる割れ目が何本もあります。その他にも、潮流によって海氷同士が押し合い、お互いぶつかり合って盛り上がった「プレッシャーリッジ」など、海氷には様々な危険が潜んでいることから、観測隊員は海氷上で行動する前に海氷安全講習を受ける必要があります。
63次隊では、パイプライン輸送に使用するホースの展張作業や雪上車による氷上輸送などのために昭和基地に到着した後すぐに海氷へ出る機会があることから、昨年(2021年)12月16日に到着した隊員に対しては当日に、その他の隊員についても昨年のうちに海氷安全講習を一度実施しています。このときは、「ゾンデ棒」と呼ばれる2mほどの金属の棒を使い、「タイドクラック」を探して海氷上を徒歩で移動する訓練を行いました。
そして、今回改めて行われた海氷安全講習では、冬を迎えて東オングル島から南極大陸へ雪上車やスノーモービルで移動するためのルート工作を今後実施することから、アイスドリルを使って海氷に穴を開けて氷厚を測る訓練と、旗竿を立ててルートを設定していく訓練を行いました。
海氷の厚さは場所によって異なるため、雪上車等でむやみに走り回ることはできません。安全に移動するためには、雪上車等の重量に耐えられるだけの氷厚があるかどうか予め測定したうえでルートを設定し、そのルートに沿って移動する必要があります。ハンドベアリングコンパスなどを使用したルート工作の訓練は、昨年3月の冬期訓練に参加して以来1年ぶりという隊員も多く、よい復習となりました。
(JARE63 馬場健太郎)